研究課題/領域番号 |
21K11683
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研究機関 | 聖徳大学 |
研究代表者 |
石川 朋子 聖徳大学, 人間栄養学部, 教授 (70212850)
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研究分担者 |
藤原 葉子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (50293105)
日下部 守昭 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任教授 (60153277)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 肝線維化 / ビタミンE / 間質 / 細胞・組織 |
研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、近い将来、肝癌の主因となると予測される生活習慣病関連疾患で、有効な予防法・治療法の開発は喫緊の課題である。近年では、肝実質細胞の脂肪蓄積軽減や炎症の鎮静のみならず、NASH重篤化の鍵となる肝線維化の抑制・改善にも注目が集まっている。ビタミンE投与は、以前からNASH治療において一定の有用性が示されながらも、治療効果への期待と副作用への懸念のバランスから、未だ絶対的選択肢とはなっていないのが現状である。本研究では、ビタミンE同族体のNASH改善効果とそれを増強させる間質環境の探索を目的としている。 ビタミンE同族体のトコトリエノールは、NASH発症初期にMMP9およびコラーゲンの遺伝子発現を顕著に低下させ、線維化抑制に寄与することを報告した。しかし星細胞活性化を示すαSMAの遺伝子発現に変化は見られず、肝線維化の亢進や抑制には、他の間質分子や間葉系細胞の関与が予測される。NASH回復期モデルでは、回復期に上昇する線維症促進遺伝子の発現は、ビタミンE投与によって抑えられた。しかし創傷治癒における間質調節因子であるテネイシン C (TNC)をノックアウトすると、上記の線維症促進遺伝子発現は変化しないにも関わらず、コラーゲン遺伝子発現は顕著に減少した。ビタミンE投与およびTNC欠損はそれぞれにNASH回復期の過剰な線維化を抑制することが示唆された。しかしながら今年度の解析では両者の相乗効果は認められず、さらなる研究が求められる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NASHからの回復実験において、予測通り、ビタミンE投与およびTNC欠損は、回復時の過剰な線維化を抑制する可能性があることが示唆された。線維化抑制時の間質環境について遺伝子発現および組織内局在の解析を進めている。線維化抑制効果は、TNC機能低下時に期待されることから、予定通り抗TNC抗体を用いた実験系の確立に移行する。
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今後の研究の推進方策 |
NASHからの回復過程において、線維化抑制との関連が予測される間質関連分子の形態学的解析を継続する。またTNC機能低下モデルとして、ビタミンE同族体の経口投与と同時に抗TNC抗体を腹腔内投与し、その効果を検証する。またこの際の肝間質環境の変化を、遺伝子発現および組織形態学的に検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
線維化抑制の再現実験において、関連が予測される間質環境分子について形態的解析を進めたが候補分子の特定には至っていない。複数の間葉系細胞誘導因子が関与することが予測されるため、遺伝子発現の網羅的解析を実施する予定であったが、試料調整に至らなかった。次年度は、NASHからの回復実験における網羅的解析に加えて、TNC機能低下モデルを確立し、ビタミンE同族体の線維化抑制効果を調節する機構について検討を行う。
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