研究課題/領域番号 |
21K11699
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
倉原 琳 香川大学, 医学部, 准教授 (00341438)
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研究分担者 |
平石 敬三 福岡大学, 医学部, 助教 (60896413)
山下 哲生 香川大学, 医学部, 助教 (80444727)
松田 陽子 香川大学, 医学部, 教授 (20363187) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 母乳 / プロバイオティクス / 炎症性腸疾患 |
研究実績の概要 |
母乳由来プロバイオティクスProbio-M9を、一日一匹あたり 2x109個の菌量を、炎症性発癌モデルマウスへ短期投与し、以下のin vivoおよびin vitro解析により、治療効果とその機序を明らかにした。炎症性発癌モデルにおいてProbio-M9が腸内細菌の多様性を改善し、Lactobacillus族やBifidobacterium族などのいわゆる善玉菌を増加させ、腸管内病原性菌の増殖抑制、宿主の免疫機能改善、腸上皮腸粘膜のバリア機能改善が作用機序として挙げられる。 炎症性発癌を抑制することが示された動物実験ではもう腸内の短鎖脂肪酸の量を測定する実験を行いましたが、コントロール群とモデル群、Probio-M9投与群の間で優位な差は確認できなかった。 In vitro実験の新たな研究結果は、培養消化管上皮細胞Caco-2とProbio-M9の共培養実験である。Caco-2細胞の培地に、リポポリサッカライド(LPS)を添加すると、上皮細胞のタイトジャンクションのダメージが観察されるが、Probio-M9との共培養によってそのタイトジャンクションの構造の一部が維持された。プロバイオティクスProbio-M9は腸内の菌そうの全体的な構造の変化をもたらすのみならず、消化管上皮への直接作用により粘膜保護・バリア機能維持の役割を果たしていると考えられる。 以上の内容で、母乳由来プロバイオティクスProbio-M9を用いた腸炎モデルマウスへの治療効果の研究の二つ目の論文を現在投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに以下の二つの論文で本研究の成果を報告した。 Hiraishi K, et al. Nutrients 14(3): 649, 2022 査読あり Xu H, et al. Nutrients 13: 1143, 2021 査読あり 今年度は、母乳由来プロバイオティクスProbio-M9を用いた腸炎モデルマウスへの治療効果の研究の二つ目の論文を現在投稿中である。腸上皮粘膜のバリア機能改善効果を検討することができた。 本研究課題の最終年度に論文化を目指し、今後母乳由来プロバイオティクスProbio-M9の消化管炎症以外の慢性炎症・免疫機能・細胞老化などの病態に関する改善効果の研究方針を固めたい。
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今後の研究の推進方策 |
IBDは多因子疾患の複雑さもあり、副作用が少なく、長期に渡って奏効する治療法の開発が望まれる。今後プロバイオティクスの長期投与がもたらす作用について検討したい。 このプロバイオティクスについては、抗老化作用・抗癌作用・免疫機能改善効果が報告されていることから、今後慢性炎症への効果や細胞老化への効果に着目して、マウスへの長期投与実験を遂行したい。 母乳に含まれているラクトアルブミン・ラクトフェリン・ミルクオリゴ糖(これらいずれも腸炎抑制作用が報告されている)などの栄養成分によるIBD改善への相乗効果についても精査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
キャンペーンにより安価に試薬を購入できたから。
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