研究課題/領域番号 |
21K11753
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
長谷川 真人 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (50293973)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | プログラミング言語 / 意味論 / 圏論 / 量子トポロジー / テンソル圏 / オペラッド / ラムダ計算 |
研究実績の概要 |
従来のプログラム意味論は、主として、高水準の、抽象度の高いモデルを与えることで多くの成果を挙げてきたが、その一方、プログラミング言語の実装モデル}に焦点をあてたプログラム意味論は、未だ発展途上段階にある。本研究は、プログラミング言語実装モデルと、結び目の理論等の低次元トポロジーの親和性に焦点を当て、低レベル・超低レベルの実装モデルに対応できるトポロジカルなプログラム意味論の構築を目指すものである。本年度の主な成果は以下のとおりである。 (1)プログラム意味論の非可換化の基礎として、変数の順番の入れ替えを許さない平面ラムダ計算に対応する平面コンビネータ代数の理論を、平面オペラッドの概念を用いt構築した。特に、平面コンビネータ代数に内在する位相幾何的構造を閉オペラッドとして取り出すアイデアを見出し、コンビネータ代数から閉オペラッドを構成する普遍的な構成を与えた。この構成は平面コンビネータ代数だけでなく、対称性(変数の入れ替え)を認めた線型ラムダ計算や、変数の入れ替えをブレイド(組み紐)として表現するブレイド付きラムダ計算に対応するコンビネータ代数についても適用できる。特に、ブレイド付きコンビネータ代数については、未解決だった公理化を与えるために本質的な役割を果たした。 (2)プログラム意味論と低次元トポロジーに共通する基本的な構造であるトレース付きモノイダル圏の基礎理論の整備を進めた。上述のコンビネータ代数の研究に関連して、トレース付きモノイダル圏の構造を内包するコンビネータ代数が存在することを発見した。 これらの成果は、論文にまとめ、近日中に投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コンビネータ代数のなかに隠れている位相幾何的構造をオペラッドとして取り出すという新しいアイデアにより、多くの新しい知見が得られ、理論構築が順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きトポロジカルなプログラム意味論の構築に取り組む。特に、オペラッドによるコンビネータ代数の研究を推進し、より応用的な話題に結び付けることを目指す。国際会議・学術誌等での成果発信にも注力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、国内外の学会に出席するための旅費を使うことができなかった。 次年度は主として学会参加費(オンライン含む)及びコロナ禍後の学会参加旅費、また論文執筆に必要な文献等の購入等に用いる予定である。
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