研究課題/領域番号 |
21K11785
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
足立 浩平 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (60299055)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 多変量解析 / 主成分分析 / 因子分析 / 平方和の分割 / 負荷量 |
研究実績の概要 |
因子分析(FA)と主成分分析(PCA)は,ポピュラーな統計ソフトウェアに常備される汎用的な多変量解析法であり,多変量データの多くの変数を少数の因子・成分に縮約するという同一の目的のために,同一データに対して適用される.こうしたFAとPCAの類似性にもかかわらず,両手法のいずれかを使うべケースの区別が明確ではない.本研究では,この問題を解決するため,FAとPCAに加えて,両者の中間というべき制約つきFAも考慮し,これら3つの手法の解の相違を考究するとともにPCA・FA・制約つきFAを使うべきケースを明確にすることを目指す.以上の目的に向けて,2021年度に行った研究の成果は,次の[1], ~[3]のように要約される. [1] 列中心化されたデータ行列の要素の平方和つまり総平方和に対して,PCA・FA・制約つきFAの解では,次の平方和の分割が成立することを示した.総平方和が,PCAでは,共通(主成分)平方和と誤差平方和に分割され,FA・制約つきFAでは,共通(因子)平方和と独自(因子)平方和と誤差平方和に分割される. [2] PCAの誤差平方和より,制約つきFAの誤差平方和が小さく,それより,FAの誤差平方和が小さく,これは,FAの共通平方和と独自平方和の合計より,制約つきFAの両平方和の合計が小さく,それより,PCAの共通平方和が小さいことを導くことを証明した. [3] PCAの負荷行列のノルムが,制約つきFAの負荷行列より大きいことを証明した.この結果と,PCAの負荷行列のノルムがFAの負荷行列より大きいことを証明した先行研究を考慮すると,PCAが負荷量の方が,FA・制約つきFAの負荷量より絶対値の大きい傾向を示唆し,絶対値の大きい負荷量が望まれる場合には,FAよりPCAを使うべきである事を,数値例とともに例証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定した研究期間全体の研究の3分の1を達成できたので.
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今後の研究の推進方策 |
本年度,焦点をあてたのは,平方和の分割と負荷量であったが,次年度以降は,独自分散の比較も考慮に入れた手法間の比較を行う.ここで,数学的な証明ができない性質は,シミュレーションによって数値的に行う.
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