研究実績の概要 |
本研究では,多変量データの多くの変数を少数の因子・成分に縮約するという同一の目的のために,同一データに適用される因子分析(FA)と主成分分析(PCA)のいずれを使うべきかを峻別するため,FAとPCAに加えて,両者の中間というべき制約つきFAも考慮し,これら3つの手法の解の相違を考究する.2022年度の課題は,前年度に証明した数学的事実から予測される経験的事実の数値的確認[1, 2],および,新たな数学的事実の証明[3]である.[1]~[3]の主な研究成果を以下に記す. [1] PCA, FA, 制約つきFAモデルから生成した人工データに,PCA, FA, 制約つきFAを適用するシミュレーションを行った.それらの解から,データ種別に関係なく,昨年度に証明した「PCAの誤差平方和>制約つきFAの誤差平方和>FAの誤差平方和」ことから予測される「各変数の誤差分散がPCA, 制約つきFA,FAの順に大きい」ことが,ほぼ常に成り立つことが確認された. [2] 上記のシミュレーションの解から,データ種別に関係なく,昨年度に証明した「PCAによって得られる負荷行列のノルムが,FA・制約つきFAの解の負荷行列より大きい」ことから予測される「PCAの負荷量の絶対値がFA・制約つきFAの解の負荷量の絶対値より大きい」ことが,例外はあるものの,髙い確率で見いだせることが確認された. [3] FAの独自分散の平方和の下限が,PCAの誤差総分散からFAの誤差総分散を引いた値であることを証明した.
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