精神疾患領域などで安静時の脳機能を数値化し特徴付け,疾患の早期発見,病態の客観的評価,疾患サブタイプ分類などの研究が盛んに行われている.その脳活動はfunctional MRI(fMRI)によって三次元に配置された膨大な画素(ボクセル)毎の時系列として測定される.本研究では,この膨大な時系列からの脳機能ネットワーク推定において,オリジナル手法として開発中のマルチブロック法を発展させる.
本年度は,脳機能画像から各個人のネットワークを推定し,同時にその個人脳機能の接続性を利用して疾患診断のための数値スコアを算出するアルゴリズムを開発した.先行研究ではネットワークのみを独立に推定する方法であったため,結果として得られるネットワークは診断での有用性が限られていた.提案された方法の利点は,診断に関連したネットワーク情報が得られ,さらにサブネットワーク推定に対応する複数のスコアが算出できるので,結果の解釈に役立つことである.ソフトウェアの開発も行い,シミュレーション研究と実際のアルツハイマー病研究における脳画像データへの適用の結果において,構築されたモデルを使用して疾患を高精度に判別できることを示した.本手法はマルチモダルに対応できるように開発されており,今後はその応用研究を進めることが期待できる.
本研究の成果として,推定されたネットワークからアウトカム (病気や健康など) を決定するための予測式を構築することができ,脳の機能的接続性を脳障害の診断をするための有用なバイオマーカーとして利用することを可能とした.
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