研究実績の概要 |
妊娠期における低線量放射線が与える影響に関しては未だ不明な点が多い。C57BL/6Nマウスを用いた体外受精によるこれまでの研究で媒精後5時間が放射線感受性期である可能性を示唆しており、特に低線量放射線照射において胚盤胞期胚以前での発生停止が見られている。受精卵に放射線照射を行った桑実胚の遺伝子発現解析から発生停止に関わる遺伝子としてTrim43遺伝子群を同定した。 Trim43遺伝子群の低線量放射線照射による着床前期発生過程における発生停止メカニズムを明らかにするために、Trim43 KOマウスの作製を行った。Trim43は、マウスではTrim43a, Trim43b, Trim43cが存在している。それぞれがゲノム上の同じローカスに存在し、ホモロジーは核酸レベルで97%、タンパク質レベルでも92%を超えているため、相同性の高い領域を用いて全てのTrim43a, Trim43b, Trim43c遺伝子を同時にKOした。作製したTrim43 KOマウスの受精卵からは4-8細胞期の胚を取得した。KO 、WT胚、複数個を用いてClontech SMART-Seq Single Cell PLUS Kitでの次世代シーケンスライブラリを作製の検討を行った。ライブラリ作製の条件を決定し、KO 、WT胚各4個ずつからscRNA-Seq解析を行った。KOマウスにおいては得られたシーケンス結果から全ての胚でTrim43遺伝子群がKOされていることが確認された。現在これらのデータの詳細な解析を進めている段階である。
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