地球の環境容量と整合的な資源フロー・ストック・生産性目標の開発に向けて、本年度は6種の主要金属(鉄鋼・アルミニウム・亜鉛・鉛・ニッケル)を対象とした世界規模でのシミュレーションモデルを開発した。 開発したモデルを用いて、世界各国・地域における過去110年間(1900~2010年)の金属利用の実態を解析し、日本を含む高所得国の経済活動は、現在、一人当たり約12トンの金属ストックに支えられている一方、世界平均は約4トン、低所得国は1トンにも満たないことを明らかにした。これは、金属利用における国際的不均衡性を意味し、本研究によってその具体的レベルが定量化された。 加えて、脱炭素社会への移行に伴うGHG排出制約と整合的な素材生産・利用量の同定を試みた。これにより、生産側技術の開発と並行して、現在よりも少ない素材生産・利用量で、住居や移動、通信といった基本的ニーズを充足するための脱物質化の必要性を確認すると共に、その具体的なレベルとタイミングを明らかにした。本年度に確立した手法は、今後複数の環境容量・素材を加味したモデル構築の基礎となるものである。 研究成果は、学術論文としての発表に加えて、一般向けの動画としても発表することで、研究成果の新たな発信・社会対話方法を模索した。また、複数の企業・団体との議論を通して、研究成果の直接的な発信と活用の基礎を構築することに成功した。
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