研究実績の概要 |
世界銀行は、主に家庭から排出される都市ゴミ(Municipal Solid Waste: MSW)の世界全体の年間廃棄物量は、2016年の20億トンから今後30年間で34億トンに急増し、地域別では特にアジアが顕著に増加すると予測している。こうした中でタイでは所管官庁のMSW監視体制の強化と情報公開が進展し、他のアジア諸国より先行していると考えられる。ただし、タイのMSW処理施設の所管官庁は7機関と多岐に渡っており、それぞれの主務業務の情報だけタイ語で分散して公開されている。 2021年度は主にMSW処理施設に関連する10の承認プロセスにおいて最初に必要とされる手続きとなることから、タイ首相府・公聴センター(Public Consultation Center, The office of Prime Minister)に着目した。タイ首相府・公聴センターに提出されたプロジェクト毎の当初計画について、当該技術、予算、処理能力、大学やコンサルティング・エンジニアリング会社などの参画者の情報を整理した。 この結果の一例として、初期投資額と処理能力の双方のデータを得られたMBT/RDF施設(40件)と廃棄物発電施設(14件)の平均初期投資額においては、MBT/RDF施設が157.7百万バーツに対し、廃棄物発電施設は1,512.0百万バーツと約9.6倍の価格差となった。しかし、処理能力当たりの平均初期投資額で見ると、MBT/RDF施設が2.9百万バーツ/トン・日に対し、廃棄物発電施設は4.6百万バーツ/トン・日と約1.6倍に収まっている。先行研究では「500 万円/規模ton から1,000 万円/規模tonとなっており国内相場と比較するとかなり安い」と指摘されていたが、本分析では同様に計算すると1,562万円/規模tonとなっており、今後の循環産業のベンチマークとなる価格を提示できた。
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