研究課題/領域番号 |
21K12424
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中野 久美子 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (20811269)
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研究分担者 |
岩本 萌 東北大学, 医学系研究科, 助手 (70894492)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 先住民 / 健康の社会的決定要因 / 国際保健 / 米国 / アラスカ / コミュニティヘルスワーカー |
研究実績の概要 |
本研究の目的はポジティブ・デビエンス(以下PD)・アプローチを用いて、1)住民の健康増進に寄与した、Community Health Worker(以下CHW;のグループ・仕組み)の好事例を抽出し、2) CHW(のグループ・仕組み)の活動活性化要素を抽出することである。第1段階として、CHW制度に関する資料・データから、PDと位置付ける項目を定める。そのためにまず、アラスカ州のCHW2名にインタビュー(オンライン)を実施し、これまでの各人のCHWとしての歩みや地域保健活動において印象に残る好事例・課題等を聞き出した。 更にPDと位置付ける項目を決定する前段階として、米国先住民の文化的背景を取り入れた治療や予防的な取り組み・効果についての文献検討を行い、歴史的・文化的背景が相互的に影響し、依存症や慢性疾患等の高い罹患率となっている米国先住民社会全体の現状や健康課題についての理解を深めた。方法は、Web of scienceを用いて、cultur* とtreatment 、prevention、substance、alcohol、suicideのキーワードを含む英文文献を検索し、文献中の文化的取り組みについての意味内容を抽出し、類型化した。更に、文化的取り組みの効果についての記載部分を全て抽出しコード化・カテゴリ化したのち、テーマ分析を行った。 結果、米国の先住民の伝統や習慣から発した15種と、西洋医学と融合した7種の取り組みに分類された。取り組みの効果については<個人のエンパワメントを促進する>、<人とのつながりを取り戻す>、<先人や大地とのつながりを得る>の3テーマを抽出した。本研究により、文化的取り組みは米国の先住民の伝統や習慣の要素だけでなく、西洋医学的アプローチと重なる治療方法が多く組み込まれ、先住民がより受容しやすい治療・予防となっている可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型インフルエンザの流行時期と重なり、コロナ禍において、現地渡航が不可で、協力者や協力機関との協力依頼などが直接できなかった。またPD・好事例抽出のために必要な入手できる資料・データが限定的であり、量的分析をする段階までに至らず、プレリミナリー・インタビューや既存文献・先行研究の整理が主な研究活動となった。
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今後の研究の推進方策 |
現在、全体計画の第一段階の達成にむけてアラスカ州に特化した治療・予防的取り組みと、それに関与するCHWの西洋医学と融合した文化的取り組みの内容と効果を更に精査し、PDとする視点・項目の特定を目指している。本年度後半は現地に渡航し、協力者や協力機関に協力依頼をとりつけ、i)地域〈属性〉、ii) CHW制度〈CHWの評価結果、継続教育の実施状況等〉、iii) CHWのアウトカム〈CHWのリファラル数、定着率等〉、iv)住民のアウトカム〈保健指標、妊産婦健診の回数・予防接種率等〉などのデータを入手・分析後、PDとして有効と考えられた項目 を定量的に特定する。そしてこれらの項目を参考に第2段階として、1年目で協力を得た2名のCHWから理論的サンプリングを行い、研究参加依頼ののち、質的手法(深層インタビュー)によりPD の活動活性化要素として統合する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型インフルエンザの流行時期と重なり、コロナ禍において、現地渡航が不可であったことが最大の理由である。現在、全体計画の第一段階の達成にむけてアラスカ州に特化した治療・予防的取り組みと、それに関与するCHWの西洋医学と融合した文化的取り組みの内容と効果を更に精査し、PDとする視点・項目の特定を目指している。今年度後半は現地に渡航することを優先事項とし、協力者や協力機関に協力依頼をとりつけ、i)地域〈属性〉、ii) CHW制度、iii) CHWのアウトカム、iv)住民のアウトカム〈保健指標、妊産婦健診の回数・予防接種率等〉などの各種データを入手・分析を試みる。そして今年度から来年度にかけて第2段階として、CHWから理論的サンプリングを行い、データから得た項目を中心に質的手法(深層インタビュー)を実施し(可能な限り対面インタビュー)PD の活動活性化要素として統合する予定である。
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