研究期間全体を通じて、烈士・軍人家族と現役軍人、復員軍人、傷痍軍人ら革命の模範の継続した自己犠牲による戦時動員と社会主義建設の推進の実態とその権力構造を明らかにした。 最終年度には、1950年代の軍人の婚姻を巡るトラブルと政権の対応について検討し、軍事動員を契機に社会が権力に把握されていく状況を確認した。長期の総力戦の継続により、入隊した夫や婚約者が長期不在となる中、基層幹部などに占有されたり、性被害を受ける者も多く、一部の女性は生活の必要などから、新たな婚姻を選択し、大量の離婚訴訟が起こされた。訴訟での不正な手段や違法な判決に対して、政権は婚姻法の原則に基づき、調査や手続きの厳密化、やむを得ない 場合の音信不通の容認などの指示を繰り返し行った。ただし、1952年には婚姻法公布以前の新たな婚姻を事実上容認する方針に転換し、朝鮮戦争参加者については1953年6月から離婚を可能とした。 一方で政権は、自由恋愛に基づき、戦場と生産現場で共に活躍する新民主主義社会の理想の夫婦・婚約者像を宣伝するとともに、家族への生活支援と教育、農業集団化への組織化と模範としての奨励などを通じて、軍人の婚姻・婚約を安定させようとした。社会に規律を与え、家族の結合の中にナショナリズムと階級意識 を浸透させようとしていた。 研究分担者は、戦後国共内戦最末期の中共根拠地の権力構造の変動を分析し、政策の急進化とその是正の中で、住民同士の横の対立が造成され、互いが自身の安全を保障するために、相互に監視し合い、党への忠誠合戦を繰り広げる状況が生まれ、結果として党の社会に対する操作性が高まっていく状 況を明らかにした。
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