研究課題/領域番号 |
21K12852
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
末村 正代 関西大学, 東西学術研究所, 非常勤研究員 (60809664)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 千崎如幻 / 欧米禅 / 近代仏教 / 鈴木大拙 / 西田天香 |
研究実績の概要 |
本研究は、20世紀前半期の釈宗演門下による海外活動と彼らのネットワークの調査・分析によって、禅国際化における宗演門下の役割を実証的に解明することを目的とする。具体的事例として、当時アメリカ西海岸で約50年に及ぶ禅布教を展開した宗演門下の禅僧、千崎如幻を取り上げ、国内外の資料をもとにその活動実態や欧米人弟子との交流を描出することを試みる。大まかな計画を示すと、初年度に国内資料収集、二・三年度に国外資料収集、最終年度に資料の統合と包括的考察を予定している。 初年度である2021年度、研究発表としては、2021年9月の日本宗教学会で、20世紀前半期のアメリカ日系移民社会と日系仏教諸宗派による布教との相関を考察、2021年11月の仏教史学会で、二種の英訳『無門関』、千崎訳The Gateless Gateとレジナルド・H・ブライス訳Mumonkanの比較検討をおこなった。資料調査としては、1930年代に千崎の布教を手助けした曹洞宗開教使、村野孝顕の資料を確認するため、2021年12月に秋田・久米山常光院を訪問した。また、来日した千崎の弟子や共著者が立ち寄った京都・一燈園と、その創始者である西田天香に関する未公開資料プロジェクトが立ち上がり、これに参加することになった。 2022年度は、今年度の研究成果の論文化、継続調査として秋田・久米山常光院、新規調査として千崎の故郷である青森調査と、千崎と同時代に東海岸で禅布教をおこなった佐々木指月開設のニューヨーク・第一禅堂調査、西田天香に関するワークショップの開催等を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナによる移動制限のため、調査開始は年度後半となった。今年度の国内調査計画に、千崎を手助けした曹洞宗開教使、村野孝顕の資料調査(秋田・久米山常光院)を新たに加え、調査を実施した。さらに、村野ら開教使の記録から20世紀前半期のアメリカにおける欧米仏教徒の情報を集約し、研究ノートとして所属学会の機関誌に投稿した。これらの点は順調な進展と言える。他方、計画内調査である青森調査の未実施といった逆調の要素もあるため、総合的には「おおむね順調な進展」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、千崎による英訳『無門関』の欧米受容に関する研究成果の論文化、これまでに収集した千崎資料をまとめた論文執筆、今年度に実施した秋田・久米山常光院調査の継続、新調査地として千崎と同時代に東海岸で禅布教をおこなった佐々木指月開設のニューヨーク・第一禅堂の訪問、西田天香に関するワークショップの開催等を予定している。加えて、可能な範囲で、計画内調査である青森調査、来日した千崎の欧米人弟子を受け入れた円福寺・禅ホスピスに関する調査を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの移動制限によって、未実施の資料調査が複数重なったため。2022年度は、移動制限が緩和され、未実施調査と新調査を積極的に遂行できるとの見通しが立っていることから、2022年度使用分として請求した。
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