本研究は、日本で子育てをする外国人保護者が、園という保育者や他の保護者と関わる場であるコミュニティに参加する際に、何が障壁になっているのか、どうすれば日本人保護者とのつながりができるのかを解明することを目的としている。そのために、(1)外国人保護者にとって、日本社会での子育てや園生活において戸惑うこと、コミュニティ参加への障壁となる要因は何か、(2)受け入れ側の日本人保護者の外国人保護者に対する意識はどのようなものかを明らかにする。 2023年度は、上記の(1)について、前年度行ったフォーカス・グループによる調査(多国籍出身4名)から得た語りを質的に分析し、そのデータを「生活Can do」と照らし合わせた結果、入園に関することや、他の保護者とのかかわりなど、日本語能力に関係がない困難さが見えてきた。日本語教育活動には外国人保護者への言語支援だけでなく、周囲の人々とつなぐことや、日本人側への意識啓発も必要である。 上記(2)について明らかにするため、園に子どもを通わせている/いた日本人保護者を対象にオンラインでアンケート調査を行い、139人から回答を得た。これまでの研究で得られた外国人保護者の困りごとを提示し、回答者に広く知ってもらうことも意図した。それぞれの属性の回答とクロス集計を行い考察した結果、日本人保護者の余裕のなさ、外国ルーツの親子の存在には肯定的であること、自ら歩み寄るのは難しいがきっかけがあればかかわれること、異文化体験の有無が意識に影響を与えていること等がわかった。異文化理解支援と交流のきっかけ作りが障壁を取り除く第一歩になると結論付けた。 研究期間全体を通じて、外国人保護者計20名から語りを聴き、わかったことを学会で発表したり、日本人保護者側にも伝えることができた。今後は教育実践に結び付けていくことが目標である。
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