研究課題/領域番号 |
21K13253
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
吉沢 晃 関西大学, 法学部, 准教授 (90743857)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | EU / 国家補助 / 競争政策 / ガバナンス / コロナ |
研究実績の概要 |
2021年度は学会報告を1回行い、英語の単著を1冊出版した。
まず、2021年10月30日に行われた日本国際政治学会2021年度研究大会(オンライン)の国際統合分科会「EUの規制政治」において、報告「EUの市場支配的地位濫用規制-3つのGoogle事件」を行った。この報告は、多くの国際関係論やEU政治の専門家が集まる場で研究成果を披露するとともに、2名の討論者(うち一名は外務省での国際通商交渉経験者)からフィードバックを得る貴重な機会となった。同報告では、本研究課題の焦点であるEU競争政策の現状と今後の見通しを考える上で重要となる、デジタル・プラットフォーム事業者の規制の問題を分析した。
また、大手海外出版社であるRoutledgeのGlobalisation, Europe, and Multilateralismシリーズに原稿を投稿し、査読を経たうえで、単著 European Union Competition Policy versus Industrial Competitiveness: Stringent Regulation and its External Implications を2021年11月に出版した。本書は、グローバル化時代におけるEU競争政策の対内的・対外的側面を研究した本である。特に第3章では、EUの厳格な競争政策とEU加盟国の競争政策・産業政策の間の相克関係、そして世界金融危機(2007-2008)以降のEU国家補助規制の動向を分析した。すなわち、本研究のキーワードであるコロナ危機が起こる前の国家補助規制の状況を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は、大きく分けて3点について研究を行った。第1に、コロナ危機前のEU国家補助規制の特徴を、内容面と手続面の両方から明らかにすることを試みた。その際には、EU法で定められたルールだけでなく、欧州委員会の内規も分析した。第2に、コロナ危機後に加盟国によって申請された国家補助と、それらのうち欧州委員会によって承認された案件の集計を行った。これにより、どのような分野でどの程度の規模の経済支援を各国が行ったかという実態を把握することを試みた。このデータベースの作成作業は、2年度目以降も継続していく予定である。第3に、コロナ危機の初期(2020年の春~夏)にEUがとった対応について調査をし、ガバナンスの変化と継続性を分析した。その際に、権力関係・意思決定手続・規制手段・規制の水準という4つの視点を設定して分析を行った。
コロナ禍の影響で、初年度はベルギーに渡航して欧州委員会職員に聞き取り調査を実施することはできなかった。そのため、2年目・3年目に同聞き取り調査を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度(2年目)は、コロナ危機後のEUの国家補助規制について、さらに調査を進めていく。具体的には、(1)国家補助規制案件のデータベース作成作業の継続、(2)EUの初期対応についての引き続きの調査、(2)EUの中長期的対応についての調査、(4)事例研究(運輸産業)を行う予定である。また、ベルギーに渡航し、欧州委員会(特に競争総局)の職員に聞き取り調査を実施するも予定している。
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