最終年度である2023年度は、日本EU学会での報告を含め、研究報告を4回行った。また、論文「国家補助規制の分野における欧州委員会のパンデミック対応ー危機によって政策形成過程はどう変容したか」を査読付き雑誌『日本EU学会年報』に投稿した。同論文は2024年発行の第44号に掲載される予定である。同論文により、40歳以下の研究者を対象とする、日本EU学会のEU研究奨励賞(政治分野)を受賞した。また、福田耕治編(2023)『EU・欧州統合の新展開とSDGs』成文堂の第8章「欧州委員会の優先課題とEU競争政策の接点ーSDGsに関連する不況対策・グリーン移行・デジタル移行を中心にー」を執筆した。
研究期間(2021-2023年度)全体を通じは、査読付き論文1本、分担執筆本1冊、査読付きの英語の単著1冊、研究報告7回の研究成果をあげることができた。また、ブリュッセルにおいて欧州委員会競争総局の職員への聞き取り調査を行うこともできた。
内容面では、国家補助規制の分野においてEUの欧州委員会がどのようなパンデミック対応を行ったのかを明らかにし、研究目的をおおむね達成することができた。研究開始当初は、EUの国家補助規制が根本的に変容しつつあるのではないかと予測をしていたが、実証研究の結果、むしろ意思決定手続に関しては一時的かつ限定的な変容が起こったことが分かった。EU研究や公共政策論などの分野で近年再び注目を集めている「危機と政策変容)に関する研究に、実証面で一定の貢献ができたのではないかと考える。さらに、今回の研究を行う中で、関連するテーマであるEU競争政策とデジタル・プラットフォーム規制についての知見を一定程度得ることもできた。このテーマに関する研究は、今後も継続していきたい。
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