研究課題/領域番号 |
21K13379
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研究機関 | 広島経済大学 |
研究代表者 |
幸田 圭一朗 広島経済大学, 経営学部, 准教授 (10734006)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ベンチャー企業 / ベンチャーキャピタル / 株式 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,ベンチャー企業による「種類株式」(議決権や優先的な配当権などのさまざまな権利が付与された株式)の発行が,ベンチャーキャピタル(VC)など投資家に対する投資誘因となるのか,実証的に明らかにすることである。そこで,各ベンチャー企業の登記簿による「種類株式」の権利内容(例えば,議決権の有無や残余財産の分配など)を網羅的に整理することで,どのような権利が投資促進につながるのか,そのメカニズムを解明していくものである。 令和3年度については,「種類株式」に関する理論の整理を行いながら,登記簿データを収集するという,当初の研究計画にしたがって,前者を中心とする研究活動を行ってきた。具体的には,文献収集により,ベンチャー企業,VCなどの投資家,双方の立場からの法的側面について検討を進めたものである。その結果,会社法第108条に規定された株式の種類を組み合わせることで多岐な設計となり,きわめて複雑な現状となっていることが再確認された。また,研究計画時には,「ベンチャー企業への新たな投資をいかに促していくか」という視座において,新規投資家のみを主要な投資プレーヤーとして想定していたが,既存投資家との権利間の差や両者のガバナンス構造など,本研究にあたっての新たな課題も見つかっている。 これらの知見は,次年度より実施する実証分析において,十分に考慮しなければならないインプリケーションを得たものであり,変数や指標の作成において,より吟味をした設計が急務であると考えられる。以上より,データの収集に取り掛かる予備的な段階において,理論的な課題を抽出した本年度の研究活動は,本格的な研究の基礎固めに徹したものであり,今後の実証分析につながる重要なものであったと認識している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は,申請時に計画した研究スケジュールに合わせて,いくつかの論文や文献,さらには会社法の基礎的なテキストなどを通じて,「種類株式」の基本的な理論について整理を行った。また,それと並行しながら,必要と思われるデータの収集を進める準備を進めてきた。 そのなかで,データの収集に,大きな変更が生じている。 本研究の実証分析にあたっては,IPO企業の登記簿データの指標化と,IPO企業に対するベンチャーキャピタル(VC)などの投資情報を組み合わせた分析を想定していた。そのなかで,後者である投資情報を入手するためには,資本政策データベース(ベンチャー企業の未上場期の資本調達に関するデータベース)の活用が必要不可欠である。しかしながら,本研究の開始に伴い,実際に手配を進めたところ,その見積り額について,申請時点とは大幅に異なることが判明した。とはいえ,IPO企業の登記簿データだけでは,実証分析を実施するにあたって大きな支障が予見されたことから,まずは,同データベースの入手を優先的に行う方針としている。そのため,令和3年度の予算のみでの契約を断念することとし,令和4年度の交付額を活用することで,その解決を図っていくものとした。 一方で,関連する未上場株式市場を理解するための書籍の入手や,本研究において想定される基本モデルの構築等については,順調に進んでいる。ただし,新型コロナウイルス拡大に伴う緊急事態宣言や移動制限などの影響もあり,関係者へのヒアリングや出張を伴う学会参加などはほとんど実施できていない。 以上より,申請時に計画した研究スケジュールのうち,理論分析については達成しているものの,データの収集という中心となる部分において,年度単位の遅れが見込まれていることから,あまり達成しているとはいえず,「遅れている」と自己評価したものである。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」の欄にもあるとおり,本研究の遂行にあたっては,研究計画の変更が生じている。具体的には,「理論分析」については,当初のスケジュールに沿っているものの,「実証分析(データ収集を含む)」「研究報告」については,年度単位での変更をするというものである。 本研究を遂行する上での課題は,データをいかに確実に入手していくかという点にある。そこで,本研究において必要不可欠である資本政策データベース(ベンチャー企業の未上場期の資本調達に関するデータベース)については,令和3年度の予算のみでの契約ではなく,令和4年度の交付額を活用することで,その対応を実施していく。なお,今回の見積り額には,必要件数を確定させること(2020年度IPO企業まで)で十分な確認を行っており,想定される金額の大きな乖離はないと確信している。 その後,一般社団法人 民亊法務協会 登記情報利用サービスを活用した,IPO企業の登記簿の取得を進めることで,権利内容に関するデータの指標化を図っていきたいと考えている。そのうえで,「理論分析」によって構築されたモデルに対して,実証的な検証を行うことで,「種類株式」の権利内容とベンチャーキャピタル(VC)などによる投資との関係について,そのメカニズムを検証していく。また,可能な範囲において,関係者へのヒアリングなども実施していきたいと考えている。 したがって,本研究課題の今後の推進方策としては,IPO企業のデータの取得を最優先にすることとし,研究の完成を目指すものとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの進捗状況」の欄にもあるとおり,本研究において欠かすことのできない資本政策データベース(ベンチャー企業の未上場期の資本調達に関するデータベース)について,その見積り額が申請時点の想定とは大幅に異なったことで,本研究を遂行するにあたっての計画見直しを行った。 本研究で予定している実証分析においては,同データベースによる投資情報を考慮せずに,IPO企業の登記簿データだけとした場合,データが不足するなどの大きな支障が予見された。そこで,同データの確保を優先的なものとするため,令和3年度の予算のみでの契約を断念することとし,令和4年度の交付額を活用することで,その解決を図っていくものとしたものである。そして,そのデータを整備した後に,登記簿情報の入手に取り組む方針としている。 したがって,次年度使用額ならびに当該年度(令和4年度)に請求する助成金を合わせた使用計画としては,この資本政策データベースとの契約料を主な支出と想定している。
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