研究課題/領域番号 |
21K13412
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研究機関 | 西南学院大学 |
研究代表者 |
原口 健太郎 西南学院大学, 商学部, 准教授 (40846523)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 地方公会計 / 地方債 / 信用リスク分析 / 公会計財務諸表 / 機械学習 / 説明可能なAI |
研究実績の概要 |
本研究は,わが国の地方公共団体が開示する公会計財務諸表が,誰に対し,どのような意思決定有用性を有するかについて,とりわけ金融市場(地方債市場)に焦点を当てて検証を進めるものである。研究の進捗は下記のとおりである。第一に,ロンドン証券取引所グループ「イールドブック」社の協力を得て地方債金利データを取得し,総務省が公表する公会計財務諸表のデータベースとリンクさせることで,分析対象となるデータベースを整備した。次に,上記データベースを活用し,重回帰分析の手法を用いて,公会計財務諸表項目と地方債金利情報との関連性分析を行った。その結果,地方債金利情報は,公会計財務諸表項目のうち,特に退職手当引当金と有意な相関を有することが明らかになった。この結果は,わが国における公会計財務諸表と地方債金利情報との関連性をはじめて明らかにしたもので,公会計財務諸表導入の意義確立に貢献する重要なものと考えている。 残る研究期間においては,上記研究をさらに進展させ,公会計モデルを統一したことによる効果や,公募債・非公募債の差異など,さらに幅広い観点から研究を進め,公会計財務諸表の意思決定有用性をより明確化していきたいと考えている。さらに,重回帰分析のみではなく,機械学習をはじめとした先端的な分析手法も取り入れる。特に,説明可能なAI(eXplainable AI)は,今後の研究に有益と考えられるため,積極的な活用を図りたい。そのために,九州大学のシステム情報科学研究院等,会計学・ファイナンス以外の研究機関との連携も推進する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記のとおり,イールドブック社の協力を得たことにより研究は順調に進展している。特に,退職手当引当金の影響や機械学習の活用可能性を明らかにしたことは重要である。すでに,国内の会計学・ファイナンスにおける代表的な査読誌に2本掲載が決定している。さらに,海外学会の査読付き予稿としても公表を行った(公刊は次年度であるため,次年度実績に計上する)。これらのことから,当初の計画以上に研究は進展していると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
上記の研究結果は,それ単独で完結するものではなく,今後ともさらなる展開可能性が見込めるものである。データ・ユニバースの拡大や説明可能なAIの拡充により,地方債・公会計の一層の研究成果獲得に努め,学会報告・論文公刊を目指す。 さらに,本研究の技術は地方債・公会計のみならず,株式市場や社債市場への展開可能性も想定されるため,残りの期間で検証を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の影響等により,出張の制約が生じたため旅費執行に関して残分が生じたもの。次年度は積極的に他機関との連携を図るため,研究出張を実現したいと考えている。
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