研究課題/領域番号 |
21K13447
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
矢吹 康夫 立教大学, 社会学部, 特定課題研究員 (40727096)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 外見差別 / ルッキズム / 見た目問題 / ユニークフェイス / 履歴書 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、①美醜(容姿の美しさ)、②規範/逸脱(身だしなみ)、③属性(病気・障害、人種・民族など)それぞれの位相での外見差別の実態を明らかにすることを目的にしている。 2021年度は、病気や障害によって異なる外見となった当事者たちの運動について「見た目問題のモデルストーリーから距離をとる当事者たち──マイフェイス・マイスタイルの『ヒロコヴィッチの穴』を事例として」(『ソシオロゴス』45号)を発表した。これは、③属性による外見差別をめぐる議論である。そこでは、ユニークフェイスが起動したアイデンティティポリティクスの弊害を、運動を引き継いだマイフェイス・マイスタイル(MFMS)がどのようにして乗り越えようとしてきたのか、MFMSが配信していたユーストリーム番組の内容分析を行った。出演者たちのやりとりから、告発型の運動から距離をとり、強い主体が相対化されていることが明らかになった。 また、「私は何を聞いて/書いてこなかったのか──当事者による調査研究とインターセクショナリティ」(『語りの地平──ライフストーリー研究所』6号)では、私自身のこれまでの研究をインターセクショナリティ概念を手がかりに反省的にふり返った。インターセクショナリティとは、さまざまな差別の複層性・交差性を指し示す概念であり、容姿の美醜、ジェンダーやセクシュアリティ、人種・民族、障害・病気などにまたがる外見差別をとらえていくための理論的示唆を与えてくれるものである。 なお、2021年度は、TBSラジオ、NHK Eテレ、中日新聞のほか、各種ウェブメディアからの取材に応じ、ルッキズムに関するアウトリーチ活動も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は、特徴なし、太っている、症状ありなどの写真を貼付した架空の履歴書を実際の求人に応募するフィールド実験を予定していたが、個々の募集に対応したエントリーシート作成の困難と実験倫理の問題とを考慮して方針を変更した。その結果、実験の実施を3月1日の採用活動の解禁日に合わせる必要がなくなった。 上記の履歴書実験に代えて計画しているのは、ウェブ調査会社にモニター登録している企業の人事担当者を対象に架空の履歴書の採否の判断を回答させるという調査である。
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今後の研究の推進方策 |
上記で説明したとおり、当初の研究計画を変更して、ウェブ調査会社にモニター登録している企業の人事担当者を対象に架空の履歴書の採否の判断を回答させる調査を実施予定である。ウェブ調査会社との打ち合わせを行い、2022年4月時点で調査票を作成中である。また、調査で使用する顔写真の加工も業者に依頼済みである。今後は、調査票を確認のうえ、5月中に調査を実施し、6月以降にデータを分析し、秋に開催される複数の学会で結果を報告するとともに、年内に論文化して学術誌に投稿予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
【現在までの進捗状況】と【今後の研究の推進方策】でも説明したとおり、当初は実際の求人に架空の履歴書を応募するフィールド実験を実施する予定だったのを変更して、ウェブ調査会社に登録しているモニターを対象とした調査を実施する予定である。これにともない、フィールド実験の準備のための人件費や印刷費等をウェブ調査や写真加工を委託する業者への委託費に変更することになる。
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