本研究では、先進国指向の既存のディセントワーク指標では捉えきれない、インフォーマル・セクターが広範に存在する途上国の実情に対する新たなアプローチを構築し、職業教育が如何に途上国型ディセントワークへの接続を促進するかについての総合的なトランジション分析を行うことを目的とし、ミックスメソッド研究を行った。労働市場におけるインフォーマル・セクターが60%を超えているインドネシアでは先進国が満たしているディセントワークのカテゴリーとは距離があった。そのため、インドネシアの文脈で新たなディセントワークの5つカテゴリー(雇用、賃金、訓練機会、職場からの健康保険、年金)を構築し、分析を行った。その結果、インドネシアでは職業教育からディセントワークへのトランジションが特に男性に対して大きく生じた。さらに、ディセントワークのカテゴリー中でも教育機会や年金の方で統計的に有意水準を示し、このような結果は、予想どおり、都市部に多く生じていた。この結果から、インドネシアの職業教育からディセントワークへのトランジションのレベルアップと地方部の職業教育の質の面を向上させ、ディセントワークへのトランジションに繋がるような政策提言が求められることが明らかになった。
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