研究課題/領域番号 |
21K13540
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
坂上 勝基 神戸大学, 国際協力研究科, 助教 (80779299)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 学力の格差 / 難民への教育 / 移民への教育 / 社会的包摂 / 非認知能力 / ウガンダ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、移民・難民を包摂する教育実践の現状とその効果について、移民・難民が多いウガンダ北部西ナイル地方の難民居住地外の都市部で行われている中等教育を事例に、(1)移民・難民生徒の包摂に関わる教育実践や地域社会の取り組み、(2)既存の教育実践や地域社会の取り組みの中で移民・難民・受入国民の生徒が持つ関わり、(3)受入国民生徒の非認知能力に既存の教育実践や地域社会の取り組みが及ぼす影響の3点の検証を行う。 当該年度(1年目)は、コロナ禍に伴う渡航制限が解除されれば現地調査を行い、ウガンダ北部西ナイル地方の学校で、移民・難民生徒の包摂に関わる教育実践や地域社会の取り組み、さらにはこれらの中で移民・難民・受入国民生徒が持つ関わりを明らかにする質的調査を実施予定だった。しかし現地調査実施が困難だったため、文献レビューを進めるとともに、利用可能な2次データを用いた関連テーマについての量的分析と、国内外学会での成果発表、成果をとりまとめた論文の執筆・修正を行った。 このうち国際NGOのUwezoがウガンダ北部西ナイル地方で収集した学力テストデータを用いた分析からは、教員補助者の存在が難民の子どもの英語の学力向上に寄与していること等が明らかとなった。マケレレ大学の研究協力者との本国際共著論文は、査読付論文として海外学術誌(International Journal of Educational Development)に掲載された。 ウガンダで実施された世界で最も長い学校閉鎖下の子どもの学習の実態を明らかにすることは、学校再開後の状況を対象する本研究のテーマとも関連する。このことから、ウガンダ統計局が世界銀行と共同で収集した高頻度電話調査データを用い、難民データ分析の前段階として受入国民の学習機会の決定要因を明らかにする量的分析を遂行し、成果の一部が国内学術雑誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍に伴う渡航制限によって、2022年2~3月に予定していた現地調査を実施することができなかったため。その一方、現地調査が困難となった場合として予定していた関連文献レビューを進め、国際NGOのUwezoが、ウガンダ北部西ナイル地方で収集した学力テストデータを用いた量的分析に基づく研究成果を、本研究の現地の主要な研究協力者との国際共著論文として出版するための作業を行った。ウガンダにおいて、世界で最も長い学校閉鎖が行われたことは本研究の当初の計画どおりの遂行をさらに困難としているが、ウガンダの学校閉鎖中の子どもの学習状況や基礎教育全体への影響に国際的関心が集まっており、本研究のテーマとも関連することから利用可能な2次データによる分析も行っている。
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今後の研究の推進方策 |
4年間の採用期間の2年目となる次年度は、初年度に予定していたもののコロナ禍に伴う渡航制限によって行わなかった現地調査を、可能な限り実施する。このなかでは、計画していたウガンダ北部西ナイル地方の学校での質的調査、さらに実験的研究デザインによる調査の準備を、現地の研究協力者と連携して行っていく。 ウガンダでは、2022年1月に学校が再開したものの、2年あまりに及んだ学校閉鎖に伴う教育現場の混乱は続いており、現地の研究協力者からのアドバイスを考慮して、対象地域・対象校の選定やオンラインでの実施の可能性、遂行可能な規模を慎重に見極めながら、調査は実施する。また、渡航が困難な状況が継続する可能性は十分にあり、現地調査への準備と並行し、利用可能な2次データを用いた、本研究のテーマと関連した量的分析の遂行も継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う渡航制限によって、当該年度に予定していた現地調査と、海外に渡航しての国際学会での研究発表を実施することができなかったためである。 基本的には次年度に、現地調査を十分な期間をとって実施する計画である。ただし、調査を行うことができるかについては、新型コロナウイルス感染症の収束状況とともに、現地の研究協力者の意向を踏まえ慎重に検討する。また、予定していた現地調査を断念せざるを得ない場合も想定し、研究目的の実現に向け量的分析を予定よりも拡張した研究活動を現地の研究協力者と進めることで、翌年度分として請求した助成金と合わせて使用する計画である。
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