研究課題/領域番号 |
21K13575
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
大野内 愛 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (60710697)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | インクルーシブ授業 / 中学校音楽科教科書 |
研究実績の概要 |
令和3年度は,イタリアの音楽科におけるインクルーシブ教育の内容について,主に文献研究,教科書分析を行なった。具体的には,(1)インクルーシブ授業の概念について把握すること,(2)イタリアで使用されている中学校音楽科教科書をインクルーシブ授業の視点で分析,考察することである。 (1)インクルーシブ授業に関する先行研究は,小学校を対象としたものは多く見られるが,中学校を対象としたものは少なく,その理由として,教科担任制になることや高校入試のための学力保障の観点から,特別なニーズをもつ生徒が排除される傾向にある。日本では特別なニーズをもつ子どもを包摂する手段としてユニバーサルデザインの手法を用いることがあるが,通常教育に追いつくための授業になることが懸念されている。インクルーシブ授業とは,多様な子どもたちを包摂するだけでなく,全ての生徒にとって教育実践がエンパワメントとなることが必要であると言える。こうしたことから,本課題において主軸となるインクルーシブ授業について「自らのエンパワメントにつながる生活・社会で生きて働く力の育成を目指し,生徒の多様性に対応し,学習者の包摂や裁縫せつを目指す柔軟な授業」と定義した。 (2)インクルーシブ授業の実現のためには,子どもたちを学びの主体とすること,子どもたちの関心にしたがって子どもたち自身が学ぶ方法を選択・想像すること,子どもたちが新たな意味世界を形成するための情報を準備しておくことが必要である。この視点で,イタリアの中学校音楽科教科書を分析すると,3点の特徴を捉えることができた。1点目はユニバーサルデザインの視点から教科書が作られていること,2点目は生徒による選択の幅が広いこと,3点目は生徒の関心に合わせた授業の展開が可能になることである。日本と比較すると,生徒の興味,関心に合わせた多様な学び方,学ぶ内容の選択肢があることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の計画では,令和3年度にイタリアの中学校の音楽科授業を視察し,生徒への継続的なアンケート調査を実施する予定であった。しかし,新型コロナウイルス感染症の影響により海外渡航をすることが困難となった。また,大学教育においても新型コロナウイルス感染症への対応に迫られ,本課題へのエフォートが著しく減少した。これらを背景に,当初の計画は全面的に変更せざるをえず,文献研究,教科書研究にとどまった。以上のことにより,本課題の進捗状況が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
少しずつ海外渡航が可能となっているため,本課題の目的を達成するための方法を一部見直しながら,状況に応じて現地調査を加えることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本来の計画では令和3年度にイタリアへ渡航する予定であったが,新型コロナウイルス感染症の影響により,実施できなかった。そのため令和4年度に複数回視察,調査のためイタリアに渡航することを計画している。
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