本研究では,知的障害児の格助詞「が」「を」「に」の誤用の特徴とその要因を明らかにすることを目的とした。その結果,対象とした知的障害児において,動詞項構造は保たれており,項の産出力は定型発達児と同程度であることが明らかになった。一方,格助詞の使用においては,知的障害児は意味役割の影響を強く受ける可能性が伺えた。さらに,定型発達児を対象とした予備的検討から,意味(意味役割)と文法の一般的な対応からの逸脱が格助詞の使用に影響する可能性が示唆された。また,知的障害児を対象として格助詞「が」「を」を含む文の指導を行う場合は,文の可逆性や語順など刺激文の種類に留意する必要があることが示された。
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