本研究は成人自閉症者の現実場面における過去の記憶と未来思考の特徴を明らかにすることを目的とした。過去の記憶に関する実験では,自閉症者はオープンエアで憶えた項目の記憶が低下していた。一方でモニターで憶えた項目の記憶は低下していなかった。この結果は,自閉症者が空間に関する情報処理の苦手さを反映している。未来思考については,1日あたりの総思考数は低下していなかった。一方,行動計画に関する思考が少なかった。この結果は,自閉症者は過去の出来事を再構築して未来をシミュレーションすることの苦手さを反映している。以上のことから,自閉症者に対してはシンプルに情報を伝えることが重要であると思われる。
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