研究課題/領域番号 |
21K13640
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
佐藤 和紀 信州大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (30802988)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | GIGAスクール構想 / 学級経営 / 情報活用能力 / 人工知能 / 1人1台の情報端末 |
研究実績の概要 |
GIGAスクール構想が前倒しとなり,令和2年度中にすべての児童が1人1台の情報端末が整備されることとなったが,導入後の情報端末の活用は困難が予測された。若手教師には軽い発達障害や不定愁訴等を見抜きにくいことによって,学級経営が困難となり,安易な離職につながっている。 本研究では,教師の力量形成の困難さとGIGAスクール構想による情報端末の整備を前提とし,小学校において1人1台の情報端末等の活用状況を調査する。また,GIGAスクール構想における学級経営の支援が可能な場面を調査した上で,人工知能の活用を前提とした支援方法の開発を行うことを目的とする。本研究では,実施しなければならないが困難なことと,小学校教師の基盤を,相互に補完し,向上させる方法の開発を目指す。
令和4年度は,そのAIで学級経営を支援するための基礎的研究として,人工知能を用いた「下駄箱の靴の揃い方判断支援システム」を試作した。また,小学校教諭8名の協力を得て,本システムを1週間,小学校で試行的に実践した。活用中は毎日,下駄箱の写真を撮影し,判定結果を記録した。その結果,「揃っている」ことの判定結果の確信度は徐々に向上し,「揃っていない」ことの確信度は徐々に低下していった。実践の終盤には,撮影方法の違いによって確信度の割合がどのように変わるかを試みる児童の姿が見られた。このことから,児童は人工知能が示す確信度を意識し,下駄箱を整理したと考えられた。また,これらの取り組みでは小学校教師それぞれに指導の工夫が見られたことから,画像認識AIを活用した学級経営支援には指導法とセットで取り組むことで効果が得られることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第1フェーズ(R3年度)は,学級経営の支援が可能な場面を検討するための調査として,ICTを活用した学級経営の支援が可能な場面を検討するために,1)先進的に1人1台の情報端末の授業実践を行っている小学校3校への訪問調査を実施した。 2)令和3年度から情報端末が導入された一般校の教師を対象にアンケート調査を実施した。 1)については,GIGAスクール構想よりも前から1人1台の情報端末の活用に取り組んでいる3つの学校の訪問調査を継続して行い,さらに定期的にオンラインによるヒアリング調査を行った。 2)令和3年度から情報端末が導入された一般校の教師を対象に訪問調査およびアンケート調査を実施した。
第2フェーズ(R4年度)は,学習用データ収集とデータのAIへの搭載・評価,IoTの活用として,第1フェーズの2)調査で得られたデータから,AIを活用して支援する場面を特定した上で,学級経営に寄与できる画像認識に必要な写真データを収集した上でAIに実装した。具体的には学級経営において,多くの教員がその必要性を感じている「下駄箱・靴箱」の状態に着目し,その揃い具合を判定するAI支援システムを開発した。本研究においても,これと同様に教師あり学習を用いた。教師データとしては現場の経験豊富な教員の判断に依拠した。そして,AIによる判定が,教師や児童と同じ感覚で判定できるか評価した。
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今後の研究の推進方策 |
第3フェーズ(R5年度)は,1)第2フェーズで開発したAI支援システムの公表と,2)AIを小学校の学級経営場面で活用するためのガイドラインの検討を行う。 1)では,WEBサイトで公開し,広く活用されると,そのフィードバックを通して,GIGAスクール構想で導入された1人1台の情報端末の活用と共に,AI支援システムの運用方法や学級経営における指導法について検討する。 2)では,1)のフィードバックを踏まえ,GIGAスクール構想で導入された1人1台の情報端末の活用と共に画像認識AIを小学校の学級経営場面で活用するためのガイドラインを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの関係で参加予定だった学会等がオンラインになったこと,かつ当初計画よりも安価で研究が進んだため,次年度使用額が生じた。次年度使用額はWEBサイト作成のための人件費及び開発費として使用する予定である。
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