研究課題
本研究の目的は、可視化された未来の自己との対話が、メンタルヘルスを伴うキャリア形成活動に有効かどうかを実証することである。本研究を通して、具体的な将来像とともに前向きな行動を促す、新たな介入技法が開発される。一年目は、「研究1:3Dアバターの有無による違い」について検討する計画を立てていた。具体的には参加者は、VR空間上で10年後の自分のアバターと対面して会話を行う条件と、空椅子を用いて会話を行う条件にランダムに分けられ、未来の自己連続性やポジティブ感情等の比較をするという実験デザインであった。計画通り実験を開始したが、予定としていた100名のデータはまだ取得できておらず、現在も実施中である。3Dアバターのスキャン精度は実験での使用に耐えるものではあったものの、参加者によってばらつきがあることがわかったため、今度改善予定である。対面した際にスムーズに会話を行うことができない参加者もいることがわかったため、この点も改善する必要がある。また、精神的健康に関連する一つの指標としてセルフ・コンパッションを測定する予定であったが、実験前後の変動を測定する必要があると考え、尺度の開発を行った。具体的には、英語版の状態セルフ・コンパッション尺度を翻訳し、日本人サンプルでの妥当性の検証を行った。これについては、Psychological Assessmentに論文が掲載された。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた通り、一年目に研究1を実施したため。また、実験前後の変動を測定できる、状態セルフ・コンパッション尺度を開発し、論文を掲載したため。
引き続き研究1を実施するとともに、計画通り「研究2:未来の自己と他者による違い」と「研究3:未来のポジティブさによる違い」を実施する。これまでに培ったVR関連の技術や、作成した尺度を用いて、計画通りに実験を行う。また、研究1の課題として残された、3Dアバターのスキャン精度と、会話のしにくさについて可能な限り改善する。分析結果は学会で発表し、研究4・5の介入研究の土台とする。
VR環境の整備のために、当初予定していたよりも予算がかかったため、前倒し支払請求を行った。しかし、VRソフト開発の業者への支払いが来年度に伸びたことで、追加で必要になった額は請求したよりも少なくなった。次年度使用額については、当初の計画通り開発業者への支払いに充てる。
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Psychological Assessment
巻: - ページ: -
10.1037/pas0001144
Current Psychology
10.1007/s12144-022-02756-1
https://sites.google.com/view/yutachishima/home