本研究は「科学的な概念を獲得した後も素朴概念は自動的に想起されやすい表象として脳内に残存し続ける」という命題を検証するとともに,科学概念と素朴概念の処理過程の詳細を調べるものである。 本研究では主に「動くものが生きている」という幼少期に顕在的な素朴概念について成人を対象とした実験によって存在を確かめた。反応時間の指標より,成人でも「動物は生きている」と判断する時間よりも「植物は生きている」と判断するためには多くの時間がかかることなどが見出された。また事象関連電位より,早い時間帯では素朴概念の自動的活性化とそれに続く素朴概念の抑制が生じ,続いて注意資源の動員が生じるという認知プロセスが提案された。
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