研究課題/領域番号 |
21K13816
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
篠田 万穂 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (50880077)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | エルゴード理論 / 最大化測度 / 記号力学系 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,二次元記号力学系において準周期的な力学系と関連した相転移の具体例を構成することを通じて,そのメカニズムを明らかにすることである. 当該年度では制約をつけて「局所化」された最大化測度について研究成果を得た.平衡測度や最大化測度は,ある関数を不変測度の集合上で最大化することにより得られる測度である.そこで,不変測度全てではなく,「回転数」と呼ばれるパラメータを固定することで不変測度の集合に制約を加えた上で最大化を考えることにより,より詳しい性質を調べることができる.当該年度の研究では,最大化測度を制約付きで考え,その通有的な性質について明らかにした.このように制約付きの問題を考えることで不変測度の集合の構造をより詳しく解析できることに加え,制約付きの平衡測度を用いた相転移の例を構成した研究などもあり,本研究を進展させるために必要な手法であると期待される. また,高次元記号力学系,特に有限型サブシフトにおける不変測度の一意性と位相エントロピーの関係についての結果も得た.準周期的な力学系を考える上で基本的な結果であり,この結果によりKari-Culik対リングと呼ばれる準周期的な2次元記号力学系は不変測度が2つ以上あることが確かめられたという点で重要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
制約つき最大化測度の通有的な性質についての結果を得て,論文にまとめ,投稿ることができたため.また昨年度執筆中であった区分的に拡大的な写像のあるクラスに対する周期測度の稠密性および大偏差原理に関する成果も論文にまとめ投稿することができたため.さらに,確率論における相互作用系との関連についても引き続き議論をつづけており,手がかりとなる文献にあたりをつけることができたため.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き最大化測度の安定性について研究する.2次元の記号力学系を理解するための代数的な方法,確率論における相互 作用系との関連を視野入れ,専門家との意見情報交換及び技術習得を行い,最大化測度の安定性に関する具体例を得ることを目指す. また,制約付きの最大化測度,平衡測度に関する研究も継続し、不変測度の空間を理解すること,さらに最大化測度の研究の源流の一つであるAubry Mather 理論を理解することにより,相転移現象の体系的な理解につながる着想を得ることを目標とする.
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次年度使用額が生じた理由 |
対面開催されなかった研究集会があったり,海外渡航の実施状況が平常時とはことなり不安定であり海外研究集会への参加や海外研究者への訪問が計画時に想定していたように行える状況ではなく,出張費が予定よりも抑えられたため. 次年度以降は研究集会の開催も対面が主流になると予想されることから,それらに参加するために使用する計画である.
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