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2021 年度 実施状況報告書

太陽g-mode振動を起源とする太陽ニュートリノの周期的な強度変化の探索

研究課題

研究課題/領域番号 21K13942
研究機関東京大学

研究代表者

中野 佑樹  東京大学, 宇宙線研究所, 特任助教 (70781889)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード太陽ニュートリノ / Super-Kamiokande / g-mode振動 / 星辰学 / 太陽標準模型 / ラドン / 宇宙線ミューオン / 太陽フレア
研究実績の概要

本研究は、太陽ニュートリノの観測時刻情報をデータ解析することにより、太陽ニュートリノ強度の周期的な変動を探索することを目的としている。特に、周期的な変動を起こす現象として、太陽中心領域で伝搬するg-mode振動に着目している。太陽ニュートリノの周期的な変動を検証するためには、観測データに含まれるバックグラウンド事象の時間変動が限りなく抑えられていることが必要となる。本年度は、太陽ニュートリノ観測データでバックグラウンドとなる放射性物質であるラドン由来の事象と、宇宙線ミューオンがGd溶解水中の酸素原子を壊すspallation事象の2つに関する基礎研究を推進した。

前者に関しては、Super-Kamiokande検出器に供給しているGd溶解水を実際に採水し、高感度のラドン検出器を利用することで、ラドン濃度を測定した。また、さらなる濃度測定の感度向上のために、ラドン検出器本体の性能向上や新しいラドン抽出用の膜脱気モジュールの性能評価などを実施した。そのほかに、観測データに含まれるラドン由来のバックグラウンド事象の時期変動に関する研究を推進した。

後者に関しては、まず宇宙線ミューオンの到来方向、Super-Kamiokande周辺の山の形状などを考慮して宇宙線ミューオンの到来頻度を予測するシミュレーション(MUSIC)をSuper-Kamiokande用のモンテカルロシミュレーションに導入した。この研究により、より現実的な状況での宇宙線ミューオンのシミュレーションができるようになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

(1) ラドン濃度測定: 既存のラドン濃度測定システムを利用して、Gd溶解水中のラドン濃度測定を継続的に実施した。Super-Kamiokande検出器のGd溶解水中のラドン濃度は、数m Bq/m^{3}程度に抑えられたが、過去の超純水のphaseに比べると2倍程度の増加が見られた。このラドン濃度が観測データにバックグラウンド事象として取得される割合を評価している。
(2) 太陽ニュートリノ観測: Gd導入後、エネルギーに関連する較正を推進し、太陽ニュートリノのエネルギー領域 (数 MeV-20 MeV) では、エネルギースケールが1.5%程度であることを示した。以上のような、Gd溶解水での太陽ニュートリノに関連する研究を通して、従来通りに太陽ニュートリノ事象の観測は安定して実施できることを示した。また、太陽フレア由来のニュートリノ探索を実施した。
(3) 宇宙線ミューオン: 宇宙線ミューオンのシミュレーション開発を実施した。この研究の過程で、エネルギーの低い宇宙線ミューオンを取り扱い、崩壊電子の時定数を測定することで宇宙線ミューオンの電荷比を評価する研究を推進した。
(4) 将来のニュートリノ検出の基礎研究: バックグラウンド事象を抑えるために、フッ素を用いたニュートリノ検出器開発を検討している。最初の段階として、CF4の基礎特性とラドン除去の可能性を評価する基礎研究を実施した。

今後の研究の推進方策

(1) バックグラウンド事象の時間変動評価: Gd溶解水中のラドン濃度の評価を継続し、太陽ニュートリノに関連するすべてのバックグラウンド事象の時期変動を評価する。特に、検出効率を評価し、太陽ニュートリノの取得効率を上げながら、バックグラウンド事象を除去する最適なカット条件を決定する。
(2) 太陽ニュートリノ観測: Gd導入以降の太陽ニュートリノ観測データの物理解析を推進する。超純水を用いた過去のphaseに比べて、エネルギースケールが2倍から3倍程度の不定性と評価した。今後さらなる較正によりこの不定性を低減する予定である。これらの研究を通して、g-mode振動探索を実施する。
(3) 宇宙線ミューオン: 宇宙線ミューオンの周期変動を評価し、太陽ニュートリノ事象のバックグラウンド事象の1つであるspallation事象の変動を評価する。特に、大気中の温度(圧力)に依存して、宇宙線ミューオンの生成量が変化するため、温度との相関を評価する研究を推進する。

次年度使用額が生じた理由

コロナウィルスの感染拡大のため、出張業務をいくつかキャンセルした。その結果、旅費に関する支出が予定を下回った。これらの業務は2022年度に実施する。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Evaluation of the radon adsorption efficiency of activated carbon fiber using tetrafluoromethane2022

    • 著者名/発表者名
      Kotsar Y、Nakano Y、Takeuchi Y、Miuchi K
    • 雑誌名

      Progress of Theoretical and Experimental Physics

      巻: 2022 ページ: 023H01

    • DOI

      10.1093/ptep/ptac005

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Search for neutrinos associated with solar flare2021

    • 著者名/発表者名
      Okamoto Kohei、Nakano Yuuki、Ito Shintaro
    • 雑誌名

      Pos (ICRC2021)

      巻: 395 ページ: 1299

    • DOI

      10.22323/1.395.1299

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Measurements of the charge ratio and polarization of cosmic ray muons with the Super-Kamiokande detector2021

    • 著者名/発表者名
      Kitagawa Hussain、Nakano Yuuki、Koshio Yusuke、Super-Kamiokande Collaboration
    • 雑誌名

      Pos (ICRC2021)

      巻: 395 ページ: 360

    • DOI

      10.22323/1.395.0360

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Development of high-sensitivity radon detector in water for neutrino physics2021

    • 著者名/発表者名
      Takeda Atsushi、Nakano Yuuki、Okamoto Kohei、Takeuchi Yasuo
    • 雑誌名

      Journal of Physics: Conference Series

      巻: 2156 ページ: 012243~012243

    • DOI

      10.1088/1742-6596/2156/1/012243

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Scintillation light increase of carbontetrafluoride gas at low temperature2021

    • 著者名/発表者名
      Mizukoshi K.、Maeda T.、Nakano Y.、Higashino S.、Miuchi K.
    • 雑誌名

      Journal of Instrumentation

      巻: 16 ページ: P12033~P12033

    • DOI

      10.1088/1748-0221/16/12/P12033

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Search for neutrinos associated with solar flares in the Super-Kamiokande detector2022

    • 著者名/発表者名
      Yuuki Nakano for the Super-Kamiokande collaboration
    • 学会等名
      Particle Acceleration in Solar Flares and the Plasma Universe -- Deciphering its features under magnetic reconnection
    • 国際学会
  • [学会発表] Recent status of SK/SK-Gd2022

    • 著者名/発表者名
      Yuuki Nakano for the Super-Kamiokande collaboration
    • 学会等名
      新学術領域「ニュートリノで拓く素粒子と宇宙」Exploration of Particle Physics and Cosmology with Neutrino
  • [学会発表] Super-Kamiokandeを用いた太陽フレア由来のニュートリノ探索2022

    • 著者名/発表者名
      中野 佑樹 for the Super-Kamiokande collaboration
    • 学会等名
      2021年度 ISEE 研究集会
  • [学会発表] ラドン検出器における湿度依存性の系統的な評価2022

    • 著者名/発表者名
      中野 佑樹, 兼村 侑希, G. Pronost, 関谷 洋之, 竹内 康雄
    • 学会等名
      日本物理学会 第77回年次大会
  • [学会発表] Search for neutrinos associated with solar flares in the Super-Kamiokande detector2021

    • 著者名/発表者名
      Yuuki Nakano for the Super-Kamiokande collaboration
    • 学会等名
      新学術「地下宇宙」2021年領域研究会
  • [備考] Yuuki NakanoのHP

    • URL

      https://www-sk.icrr.u-tokyo.ac.jp/~ynakano_s/index.html

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公開日: 2022-12-28  

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