研究課題/領域番号 |
21K13977
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
今城 峻 京都大学, 理学研究科, 助教 (70795848)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | オーロラ粒子加速領域 / 沿磁力線電流 / 準静電的平行電場 / 高高度衛星観測 / 降り込み電子観測 / 高エネルギーイオン流出 |
研究実績の概要 |
令和3年度は(1)オーロラ加速領域の赤道面投影点付近でどういった兆候がみられるか、(2)高高度で観測される下側加速域から加速されたイオン(イオンビーム)の統計的な特徴に関して調査を行った。(1)では、あらせ衛星が内部磁気圏の比較的赤道に近い位置で下側の加速域の兆候のあるイベントに関して詳細に調べた。その結果、収束電場は赤道近くまで投影されており、イオンビームは対応する電場でドリフトし、磁力線方向からそれていることが3次元の粒子分布から初めてしめされた。電場の強さから赤道面近くのこの収束電場構造は1200km程度の狭い範囲に集中しており、プラズマシート粒子の輸送経路を大きく蛇行させうることがモデルからしめされた。また、有意な圧力勾配電流を作れる圧力勾配が、イオンビーム中に生じていることが確認され、これは加速領域の兆候と電流ソース領域を同時に観測した珍しい例といえる。結果はGeophyscal Research Letter誌に投稿済みである。(2)に関しては、イオンビームイベントを303例収集し、そのエネルギーとフラックスの支配要因を地磁気指数等との相関関係から調査した。その結果、フラックスではO+イオンに関しては地磁気活動度と正相関があるのに対し、H+ではほぼ無相関であることがわかった。またエネルギーではH+で弱い相関が見られた。指数の種類では極域対流と関係したPC indexがO+フラックスと最も高い相関をしめしたことから、対流による摩擦加熱でO+のスケールハイトが変化し、加速域下端高度の密度の上昇がO+のみで起こることが原因と示唆される。またこれらの地磁気活動依存性はプラズマシートイオンとそれとよく似ており、イオンビームがソースとなっている可能性を示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最初の計画では電子の特徴から調査する予定であったが、観測データの整備状況からイオンビームのほうがイベントを収集しやすかったため先に着手した。イオンビームに関しては高高度領域での特徴は個別例および統計的特徴を大方調べ終えており、次の段階にすすめる状況である。また、イベントの解析結果は論文投稿済みおよび査読結果に基づくリバイズ原稿も投稿済みであり、順調にアウトプットも進んでいる。一方で昨年度から研究代表者の所属が変更になり、新たな業務が増したことでデータの解析などに当てられる時間が少なくなったため、当初見込んでいた量のデータ解析を行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
この一年であらせ衛星の高角度分解能の電子データの整備が進んだのでまず今年度は電子データから降り込み電子を観測出来るイベントを収集し、その特性を調べることに注力する。まず、あらせ衛星の高度より上側の静電的電子加速イベント発生時の、衛星の高度、緯度、地方時、プラズマ領域や地磁気擾乱度を整理し、どういった条件のときにどういった場所で超高高度加速域が発生するのかという基本的な性質を明らかにする。あらせ衛星よりも下側の加速域から上向きに加速されたイオンのエネルギーや電子のロスコーンハイパボラから衛星高度下側の電位差を見積もり、降下電子の持つエネルギーから推定される衛星高度上側の電位差との比から、加速全体に対する超高高度加速の寄与の度合い、その時間変化の他物理量との関係を明らかにする。昨年度は緊急事態宣言やまん延防止等重点措置等期間がながく出張での打ち合わせ議論を行わなかったが、今年はそれらの制限がなければ名古屋大学などに訪問する。あらせ衛星で観測できる幅広い帯域の電磁場において、超高高度加速域ではどのような波動が見られるかを明らかにする。波動の強弱のタイミングと粒子分布の変動のタイミングを比較し、電子加速に対する波動の寄与の可能性を検証する。ここまでの解析結果を現象ごとに区切って論文にまとめる。 現在の所属は2年目となるため、よりデータ解析に配分できる時間が増えると見込んでいる。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度の多くの期間で緊急事態宣言及び蔓延防止措置で出張が制限されたこと、学会の実地開催が行われなかったこと、授業・授業準備で出張が困難な期間があったことにより旅費の支出がなくなったため次年度使用額が生じた。今年度のコロナウイルス流行次第であるが、実地で開催される場合は参加する予定である。また国内の出張は緊急事態宣言及び蔓延防止措置でなければ今年度は名古屋大学などに研究打ち合わせで出張する予定である。
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