研究課題/領域番号 |
21K13977
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
今城 峻 京都大学, 理学研究科, 助教 (70795848)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | オーロラ粒子加速領域 / 沿磁力線電流 / 準静電的平行電場 / 高高度衛星観測 / 降り込み電子観測 |
研究実績の概要 |
令和5年度は(1)超高高度からのポテンシャル加速的電子降込の1例の総合的解析とその論文化、(2)イベントの観測可能性の定量的な調査。(3)ポテンシャル分布の準中性解の数値計算からの超高高度加速領域の生成可能性の調査、をおこなった。(1)では昨年度に引き続いて2017年9月16日5時50分~6時00分UTに発生した電子のポテンシャル加速イベントを詳細に調べた。新たにenergy fluxの推定や結果の解釈の整理を行い、フルペーパー論文にまとめJGR space physics誌に投稿し、現在リバイズ中である。(2)においては、2017/4-2021/3において、あらせ衛星でロスコーン観測が行える期間をしらべ、地方時18-6hにおいては全観測の26%の観測時間があったが、オーロラアークの発生率の高い地方時21-1 hに絞るとその観測時間は0.01%にまで低下することがわかった。実際のイベント発生頻度が低いと見られるのに加え、こういった観測条件の問題でわずか数例しか超高度加速電子降込の可能性のあるイベントが見つからなかったと考えられる。(3)においては、東北大学の研究グループと協力し、高度8Re付近に電位差領域が存在する場合に電荷の中性が磁力線全体にわたって保持できる分布ができうるかを数値計算で調査した。試行錯誤の結果、磁気圏プラズマが低密度で、電離圏密度が高密度なときに低緯度側の加速領域が3-4Reにあれば観測に近い衛星上下の電位差を得ることができることがわかった。これらの結果に関して、2024年5月に行われるJpGU2024で招待講演を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023/6末まで育児休業中であり、本格的に本課題の遂行を再開するのはやや遅れることになった。観測条件の特に良い電子のポテンシャル加速イベント1例を詳細に調べた結果については論文としてまとめ投稿するところまで当初の予定通り完了した。また、家庭的事由のため出張は国内の主要な学会のみに限られた。
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今後の研究の推進方策 |
高高度で電子降込が検出されたイベント数が限られており、統計解析やほか観測との連携観測は困難である。そのため、ロスコーン内を分解できるイベントに限らず、単一エネルギー的な分布のイベントを探すことや、新たに発見した短時間の磁場の変動で示される薄い沿磁力線電流を持つサブ秒スケールの静電波に関して詳細に調べることを検討する。数値計算のパラメタサーベイをさらにすすめ、どのような条件が超高高度加速領域の存在に適しているのかを明らかにしていく。また、加速領域の高高度側で下側で加熱された電子の分布が、あらせの高角度分解能観測で明瞭にとらえられており、この観測的特性と粒子追跡の数値計算との比較を行い、加熱高度分布やその加熱特性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定では旅費として計上した予算の割合が大きかったが、2022年12月から2023年6月末まで育児休業により研究活動を停止していた事に加え、復帰後も家庭的事由のため研究の打ち合わせのための出張や現地での国際学会への参加は行うことができなかったため、次年度使用が生じた。次年度は研究の打ち合わせのための出張や現地での国際学会への参加を行う計画である。また論文の執筆のための英文校正や論文出版費にも使用する予定である。
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