研究課題/領域番号 |
21K14041
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
坂根 慎治 京都工芸繊維大学, 機械工学系, 助教 (70876755)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フェーズフィールド法 / 格子ボルツマン法 / GPU計算 / 適合格子細分化法 / 凝固 / 積層造形 |
研究実績の概要 |
本研究は,積層造形過程のマルチフィジックス(固体溶融,デンドライト成長,液相流動,核生成,熱輸送,粒成長)を再現するシミュレーションモデルを構築し,その大規模計算を可能とすることで,積層造形プロセスで形成される凝固組織の高精度予測を達成することを目的としている.本年度は,マルチフィジックス凝固中のデンドライト成長を高精度に表現可能なシミュレーションモデルの大規模計算手法を構築した. まず,固液界面にのみ動的に細かい数値格子を割り当てる適合格子細分化法を,演算性能の高いGPUを複数用いた3次元柱状デンドライト成長シミュレーション手法に組み込んだ.これにより,特に,凝固初期の低固相率の場合や,デンドライトの一次枝間隔が広い場合において,大幅な計算コストの削減を達成した. 次に,実装した大規模計算手法の凝固モデルを,液相流動や固体の運動を考慮可能なモデルに拡張した.この流体計算の追加により,先に構築した計算手法よりも4倍ほど格子点当たりの計算実行時間が増加することがわかった.そこで新たに,場ごとに異なる格子幅の数値格子を用いる複数格子法を導入し,流体計算にフェーズフィールド計算より2倍粗い格子を割り当てることで,マルチフィジックス凝固モデルの計算コスト削減を達成した. ここで開発した大規模計算手法は,急冷急流下において3次元デンドライトが成長する積層造形プロセスを,デンドライト組織スケールでシミュレーションするための基盤技術である.現在は,開発手法の凝固モデルを非等温・多結晶問題へと拡張することで,積層造形を再現可能な計算モデル構築を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では,本年度中に積層造形のシミュレーションモデルを構築し,次年度に適合格子細分化法を適用した大規模計算手法を構築する予定であった.積層造形モデルの構築にあたり,二元合金凝固のフェーズフィールドモデルをベースとして,液相流動を伴う問題,非等温凝固問題,多結晶凝固問題を取り扱えるように段階的にモデルの拡張を進めている.現在は,非等温凝固問題の実装まで完了した.また,研究を円滑に進めるため,それらの凝固モデルの大規模計算に必要な効率的な計算手法構築についても初年度から着手した.そのため,次年度に予定していた適合格子細分化法や複数格子法を適用した大規模計算手法の構築は既に完了しており,研究課題はおおむね順調に進展していると判断している.
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今後の研究の推進方策 |
積層造形モデルを構築するため,当該年度に構築した手法の多結晶問題への拡張を進めている.上記モデル構築が完了した段階で,溶融プール断面の薄膜3次元シミュレーションを実施し,計算性能や妥当性の評価を行う.実験観察で報告されている組織形態と比較し,乖離があればその原因を考察し,シミュレーションモデルの改善を検討する.さらに,開発手法を用いて,溶融プール内での大規模凝固シミュレーションを実施し,開発手法の積層造形組織予測における有用性を示す.
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