研究課題
若手研究
建設産業の役割と災害リスクを明示的に考慮した動的マクロ経済モデルを定式化した.モデルを用いた分析により,以下の知見が得られた.家計のリスク回避性向が十分に高い場合,災害リスクの存在は,建設産業の最適規模を増加させる.現実に観察される災害保険のリスクプレミアムの高さを考慮すると,この結果は日本に当てはまると考えられる.災害リスクの増加に伴い,建設産業の最適規模が拡大する場合,社会資本投資の最適水準も増加する.また,建設産業の最適規模の増加率は,大都市圏よりも地方部の方が高い.
土木計画学
研究成果の学術的意義は,社会資本や住宅・建築物などの供給を担う建設産業と,災害リスクの存在を明示的に考慮したという点において,独創的なマクロ経済モデルを定式化したことにある.社会的意義としては,建設産業の最適規模と災害リスクの関係に関する,以下のような政策的知見を導いたことにある.まず,異なる国の建設産業の規模を比較する際には,その国が直面する災害リスクの大きさを考慮に入れる必要がある.次に,社会資本投資計画は,建設産業の規模や地理的配置を最適な水準に誘導するうえで,重要な役割を果たし得る.