本研究は、鉄筋コンクリートの含水状態が加熱による付着劣化に与える影響を明確にし、最終的には受熱後の熱応力によって生じた内部のひび割れと、受熱後の付着強度の関係を明らかにすることを目的とするものである。受熱後の付着性能への影響要因としてコンクリートの含水状態を考慮し、コンクリートの構成要素の高温時力学特性、コンクリートの内部ひび割れ性状,そして、コンクリート内部の加熱中の水分状態と加熱後の鉄筋コンクリートの付着性能との関係について検討する。 本年度は、京都大学研究原子炉(KUR)の中性子イメージング装置を用い、鉄筋コンクリート試験体に対し加熱実験を実施し、加熱中のコンクリート内部の温度、圧力を測定するとともに、中性子ラジオグラフィにより、コンクリート内部の水分の経時変化を測定し、コンクリート内部の含水状態と水蒸気圧形成の検討を行った。また、ガス炉を用いて鉄筋コンクリートの試験体を加熱した後に引抜試験を実施し、コンクリート内部の加熱中の水分状態と加熱後の鉄筋コンクリートの付着性能との関係について検討を行った。 中性子イメージング装置を用いた加熱実験により、加熱中のコンクリート内部の水分挙動と水蒸気形成の様子を観察し、加熱時のコンクリート中の水分状態の変化と水蒸気圧形成の関係が確認された。また、初期含水率が低い試験体の方で0.002D時の付着応力が低い結果となり、加熱前のコンクリートの含水率が付着の初期剛性に影響を与える可能性が示唆された。
|