研究実績の概要 |
本研究の目的は、「新しい生活様式」としてのウォーカブルな近隣環境を解明することである。その研究方法として、スマートフォンのGPSから収集した「ポイント型流動人口」という位置情報履歴ビッグデータを用いて、時間地理学を援用したデータサイエンスを行う。それにより、今まで研究されてきたウォーカブルな近隣環境から変化した、コロナ禍後に向けた「新しい生活様式」に即した、ウォーカブルな近隣環境を解明することができる。 そこで本研究は、2021年度、研究①:活動エリアとしての生活圏の変化、研究②:時空間ポイントとしての生活場所の変化、研究③:時空間パスとしての移動手段の変化、について研究した。具体的には、大阪都市圏周辺地域に立地する大阪府茨木市を対象に、第1回目の緊急事態宣言が発令された2020年4月と、その1年前の2019年4月のパネルデータを比較して、生活行動の変容を分析した。その結果、自転車による移動が増加して(Sustainability, Vol.13, Issue13. No.7442)、公園に人々が集まっており(Urban informatics for future cities, Springer Nature, pp.51-67)、生活圏がおよそ半分に減少したこと(Sustainability, Vol.13 Issue16, No.8974)を解明した。すなわち、ウォーカブルな近隣環境が形成されていたことが分かった。この結果は学内で注目を集めて、大阪市立大学プレスリリース(2021/9/6)で発表した。 2022年度は、この研究成果を基に、生活圏や流動人口と新型コロナウイルス感染者数の関係性などに注力して研究を進める。それにより、ウォーカブルな近隣環境が形成されることが、感染症予防対策の観点からも効果的なのかどうか、検証することが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2021年度は、研究①:活動エリアとしての生活圏の変化、研究②:時空間ポイントとしての生活場所の変化、研究③:時空間パスとしての移動手段の変化、について研究した。その方法として、ポイント型流動人口を用いて、大阪都市圏周辺地域に立地する大阪府茨木市を対象に、第1回目の緊急事態宣言が発令された2020年4月と、その1年前の2019年4月のパネルデータを比較して、生活行動の変容を分析した。 研究①は、ポイント型流動人口を用いて、Minimum Convex Polygonにより、生活圏の変化を分析した。その結果、生活圏が都心部から都市内での移動へと変化しており、およそ半分、距離にして約9.7km減少したことを解明した。この結果は、学術誌Sustainability(13,16, 8974)に掲載された。 研究②は、ポイント型流動人口を用いて、Space-Time Kernel Density Estimationにより、滞留場所の変化を分析した。その結果、朝夕の時間、駅舎に多く見られていた人流は、昼間の時間帯の公園へと変化したことを解明した。この結果は、国際会議CUPUM2021で発表して、学術書籍Urban informatics for future cities(51-67)に掲載された。 研究③は、ポイント型流動人口を用いて、Empirical Bayesian Krigingにより、移動手段の変化を分析した。その結果、移動手段は、自動車から自転車や徒歩に変化したことを解明した。この結果は、学術誌Sustainability(13, 13. 7442)に掲載された。 これらの成果により、第1回目の緊急事態宣言が発令された2020年4月に、ウォーカブルな近隣環境が形成されていたことが分かった。この結果は学内で注目を集めて、大阪市立大学プレスリリース(2021/9/6)で発表した。
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