研究課題/領域番号 |
21K14598
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木崎 和郎 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (00880535)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 円偏光発光 / 無機蛍光体単結晶 |
研究実績の概要 |
キラルな結晶構造を持った無機蛍光体粉末および単結晶を作製し、発光特性を評価した。 母材となるホウケイ酸ランタン、およびユウロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、エルビウム(Er)添加蛍光体粉末は固相法によって合成した。合成した粉末について、粉末X線回折測定とRietveld解析を行うことで結晶構造に対する希土類添加の影響を評価した。加えて、拡散反射スペクトルおよび蛍光スペクトルの測定から分光特性を評価した。EuおよびTbを添加した粉末試料では可視光領域で、Er添加試料では1650nm付近の近赤外領域で発光を観測した。また、EuおよびTb試料では10%まで添加濃度を増やしても濃度消光は見られなかった。Eu添加試料の発光スペクトルの解析から、ホウケイ酸ランタンが強い結晶場を有していることが分かった。 単結晶においては、モリブデン酸リチウムを用いたフラックス法によって、ホウケイ酸ランタン単結晶の育成について検討した。種々条件検討の結果、0.5~1㎜角の単結晶を得ることに成功した。さらに、同じ育成条件を用いて、EuおよびTbを添加した蛍光体単結晶を育成することにも成功した。フラックス法によって育成したEu添加蛍光体単結晶は、偏光顕微鏡を用いてL体とD体とに選別したのちに、円偏光発光(CPL)測定に供した。同じ掌性の単結晶を複数個粉砕した後にグリースに分散させCPLを測定した結果、明瞭なCPLシグナルが観測された。また、CPLシグナルが掌性の違いによって符号反転することも確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、①キラルな結晶構造を持ったセラミックス蛍光体単結晶を育成し、②結晶構造と円偏光発光特性を評価し、③結晶構造のキラリティの強さを定量化することで、④結晶構造のキラリティが円偏光発光に与える影響を解明することを目的としている。 初年度は、キラルなセラミックスの一つであるホウケイ酸ランタンの単結晶育成に成功し、この物質がCPLを示すことを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
Eu添加単結晶のCPL測定に成功したので、他の希土類を添加した蛍光体単結晶も育成してCPL測定を行うことで、様々な波長領域でCPLが現れるか等を検証する。 また、ホウケイ酸ランタン以外のキラルセラミックスにおいても単結晶育成を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
近赤外領域のCPLを測定するために必要な偏光素子を購入するために、昨年度の支出を抑えて次年度持越しを計画した。
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