本研究は、キラルな結晶構造を持ったセラミックス蛍光体の円偏光発光(CPL)と結晶構造との相関を明らかにし、キラル無機化合物の既存の偏光応答理論を発光や励起状態の領域に拡張することを目的としている。この研究の達成によって、安価・安定なセラミックス材料を用いたCPL材料の開発を推進することが可能となる。本研究では、キラルセラミックス蛍光体単結晶を育成し、その結晶構造解析と結晶キラリティ強度の定量化、CPL測定によって、CPL特性に結晶構造がどのような影響を与えているのかを明らかにする。 初年度および次年度にかけて、LaBSiO5(LBSO)単結晶育成条件の検討とユウロピウム添加LBSO単結晶のCPL測定を行った。またSPring-8にて測定したデータを用いてX線単結晶構造解析を行った。その結果、それぞれの単結晶から、正負に反転した概ね鏡像となるCPLスペクトルが得られた。X線構造解析の結果、キラルの関係にあるP31とP32の空間群をもつLBSO単結晶が存在していることを確認し、またCPLスペクトルとの比較から、結晶構造(らせん軸の回転方向)とCPLシグナルの符号との相関関係を明らかにした。 当該年度には、LBSO結晶の結晶構造データから結晶キラリティの指標であるContinuous Chirality Measure(CCM)の算出、および本助成によって導入した光弾性変調器(PEM)を用いてCD/CPL測定システムの構築を行い、モデル化合物のCD・CPLシグナルの検出を行った。また新たにテルビウムおよびエルビウムといった異なる希土類イオンを添加した単結晶の育成および分光測定を行った。また、SiをGeに置換したLaBGeO5(LBGO)についてもフラックス法による単結晶育成条件の検討を行った。LBGOの単結晶育成についてはまだ最適化ができておらず、今後の研究が必要である。
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