研究課題/領域番号 |
21K14683
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
松本 拓也 神戸大学, 工学研究科, 講師 (70758078)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ポリビニルアルコール / 超臨界二酸化炭素 / ウレタン / 側鎖エステル化 |
研究実績の概要 |
本研究では,結晶性高分子の階層構造を利用した高次構造をテンプレートとした高分子の修飾反応により,元の結晶構造を保存しつつ,非晶領域のみに機能性部位を導入することで,これまでの高分子反応とは一線を画する新奇高分子反応を開拓し,高次構造の特性と高分子反応により新たに導入した機能を両立した高分子材料を創出する。 2021年度では,結晶性ポリビニルアルコール(PVA)フィルムに対し,生分解性で二重結合を有するオレイン酸を非晶領域に導入するとともに,イソシアネートを同様に非晶領域のPVA側鎖の水酸基に選択的に反応させることに成功した。超臨界二酸化炭素中で反応させることで,結晶領域を保持したまま,エステル化およびウレタン化を非晶領域に限定して進行させた。反応進行は,NMRや赤外分光法により確認し,水酸基が十分にエステル化・ウレタン化されていた。また,X線回折測定の結果から原料のPVAの結晶が高分子反応後も保持されていることが測定により確認できた。比較として溶液反応によるPVAの水酸基のエステル化・ウレタン化を行った。溶液中での高分子反応は,PVAの水酸基に対し,ランダムに変換反応を起こすため,得られた高分子では,結晶領域が存在せず,非晶質となっていることが,X線回折測定の結果から確認ができた。 以上のことから超臨界二酸化炭素中で高分子反応を行うことで,超臨界二酸化炭素の結晶領域と非晶領域の異なる浸透性を利用することで,結晶性高分子であるPVAの非晶領域のみの選択的な修飾に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポリビニルアルコールの超臨界二酸化炭素中でのエステル化およびウレタン化に成功するともに,非晶領域の選択的反応に成功しており,2022年度には学術会議での成果発表を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
今後,非晶領域選択的反応を利用した架橋形成や架橋の組み換えを行うことで,結晶構造と化学架橋構造を同時に両立させた高分子材料の創出に取り組む。さらに,選択的に修飾した変性PVAの構造の解析にも取り組み,修飾された非晶領域の物性との相関を明らかにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は,研究に必要な費用の多くを大学からの交付金により賄うことで,研究を十分に進行することが可能であった。次年度には,超臨界二酸化炭素発生装置の更新費や反応試薬の購入に交付されている研究費を計上する予定である。
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