研究課題
本年度は、当研究室で開発した膜透過性核酸MPON(Membrane Permeable OligoNucleotide) について、第一世代MPONを上回る膜透過性効率および遺伝子抑制効果を示す次世代MPONの開発に取り組んだ。MPONはアンチセンスDNAやsiRNAなど標的遺伝子の発現抑制に用いられる核酸材料に対して、細胞膜透過を促す構造を付加した化学修飾核酸を指す。いくつかの有望な修飾構造が得られ、論文として報告した。研究期間全体を通じて、(A) 第一世代MPONの細胞膜透過メカニズムの解明 および (B) 細胞内動態の観察 と、それらの知見を踏まえた (C) 次世代MPONの開発に取り組んできた。(A)(B)について、蛍光標識した第一世代MPONをヒト培養細胞であるHeLa細胞に投与し観察したところ、投与直後に細胞膜に結合し、非常に迅速に細胞内に導入される様子が見られたことを契機に、第一世代MPONが膜タンパク質との結合を介して細胞内に導入されることを示し、その責任タンパク質の候補を同定した。また、細胞膜透過後に細胞核内へと移行することを発見し、核内スプライシングの制御に応用できると明らかにしたことで、将来的な筋ジストロフィー治療への適用可能性を示した。優れた性質を示す一方で、投与濃度の上昇に伴い、細胞内で局所的に凝集している様が一部の細胞で見られた。凝集によって、見かけの核酸濃度低下に伴う機能低下や細胞への悪影響が起こる可能性も危惧されたため、そのリスクを回避するために新しい膜透過性核酸の開発に取り組んだ (C)。複数の化学修飾を提案し評価を進めている最中であるが、既に効果を示す有望な修飾核酸が得られつつあり、順次論文として報告している。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Chemical communications
巻: 59(33) ページ: 4974-4977
10.1039/D3CC00460K