本研究では単一線虫マルチオミクス解析と行動解析に基づく寿命予測を組み合わせて、同一環境・同一遺伝型線虫で寿命の差異が起きる分子メカニズムを明らかにすることを目指す。本年度は (1) 単一線虫のマルチオミクスサンプル調製法の構築 (2) 単一線虫の経時的マルチオミクス解析による加齢機構の解析 (3)表現型情報を取得するための顕微鏡システムの構築 を行った。 (1) 単一線虫のマルチオミクスサンプル調製法の構築:前年度に引き続き、サンプル調製溶媒の微量化を行うことで単一線虫のマルチオミクスサンプル調製法を構築した。脂質分析時の懸濁溶媒を変更することで、従来より中性脂質をよりよいピーク形状で保持できるようになった。 (2) 単一線虫の経時的マルチオミクス解析による加齢機構の解析:単一線虫を加齢に従って経時的にサンプリングし、マルチオミクス解析を行うことで単一線虫から既知の加齢に関する分子群が検出できるかを確認した。加齢に伴い、代謝・発現タンパク質のプロファイルは大きく変動しており、加齢の影響をマルチオミクス解析でとらえられることが示された。また、寿命の後半には個体間の差がより大きくなっており、寿命後半の個体を多数分析することで、加齢プロセスをpseudotimeで解析できることが示唆された。 (3) 表現型情報を取得するための顕微鏡システムの構築:3Dプリンターとラズベリーパイを用いてより簡便・長期間に安定してデータを取得するための観察システムのための試作品を作成した。
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