Oscillatoxinは海洋シアノバクテリアが生産するポリケチド系天然物群である。Oscillatoxin Fは特定のがん細胞株に対して選択的な増殖抑制活性を示すことから、副作用の少ない抗がん剤になり得る。本研究では、細胞株選択的な増殖抑制活性を保持した単純化アナログの開発とその作用機構の解明を目的としている。 昨年度は、oscillatoxin類の全合成によって得られた中間体の活性評価を行い、A環上の官能基が細胞株選択性に重要であることが明らかとなった。また、フェノール性水酸基に対して分子プローブを導入するための修飾を加えることが容易な新しい合成ルートを考案し、鍵中間体を供給した。 本年度は、細胞株選択性と安定性に優れた単純化アナログの開発を目的とし、モデル化合物を用いてA還およびB環の簡便な構築法を検討した。まず、AB環を一挙に構築することを目指してプリンス環化反応の条件検討を行なったが、目的物を得るには至らなかった。そこで次に、B環を構築してからA環を付加する逐次的な合成法を検討した。第二世代Grubbs触媒ならびにHoveyda-Grubbs触媒を用いた閉環メタセシスなどを用いてB環を構築した。また、この方法を本基質に適用してA環を持たないDes-A-ring oscillatoxinの合成に成功した。今後、B環上のカルボニル基を足がかりとして様々な官能基導入ならびにA環の構築が可能と考えられる。 以上より、A環部分の構造活性相関研究による高活性アナログの創出や、分子プローブ開発および作用機構解析が進むものと期待される。
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