研究を中断していたため、新たな実績はない。初年度に実施した結果が全ての成果となるので、以下に記載する。 本研究の目的は空洞状膨化食品の調製条件においてデンプンの形状と糊化度が空洞状膨化に及ぼす影響について追究すること、さらに焼成方法でデンプンの糊化が制御可能か検討することである。初年度はこれらの目的のうち、デンプンの形状および焼成方法が膨化性に与える影響について検討を行った。製粉後の穀物粉におけるデンプン形状は、穀物の種類や品種により胚乳細胞の軟質・硬質の相違があるため多様である。空洞状膨化に及ぼすデンプン形状の影響が明らかにされれば、製粉方法などの導入により、消費者のニーズに応じて選択の幅を広げる代替え製品開発につながることが期待できる。 そこで、穀類のなかでも凝結デンプンを多く含むソバ粉を用いて検討を行った。ソバ粉はロール粉砕と気流粉砕で製粉し、粒度分布測定および走査型電子顕微鏡にて観察を行った。その結果、気流粉砕で製粉したソバ粉はメジアン径が小さく単粒デンプンを多く含んでおり、比容積およびシュー内部の空洞面積も有意に高く、膨化性が向上することが明らかとなった。 次に焼成法では乾式加熱と湿式加熱が膨化性に与える影響について検討した。コストや作業管理の面からも新たな工程を導入しなくても、焼成方法の変更により焼成過程で製品に与える熱量を調整することで、デンプンの糊化の制御が可能となるのではないかと予測される。また、焼成過程でのデンプン糊化や生地温度の昇温速度は膨化性に大きく関与する要素であり、膨化機構の解明に重要となる。 初年度はこれらの要素のうち、乾式加熱および湿式加熱での生地温度の昇温速度と水分蒸発率の測定を行い比較を行った。その結果、湿式加熱は乾式加熱に比べてシューの比容積の値が高く、また生地温度の上昇が速く、水分蒸発率も高いことが明らかとなった。
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