干渉効果とは,ある種のウイルスの感染がその後の同種ウイルスの感染を阻害する現象である.本研究課題では植物における病原性RNAであるウイロイドにおいて,干渉効果が成立する条件を探索した. coleus blumei viroid-1(CbVd1)およびCbVd3を接種源,ベンサミアナタバコを宿主とした実験系において,以下の検討を行った。 ①単独接種:両ウイロイド種において,すべての接種個体で感染が確認された。②両種等量を同時に接種:検出率,生体濃度共にCbVd3が高い傾向があったものの,多くの接種個体において両ウイロイド種が検出され,明確な干渉効果は観察できなかった.③CbVd1(CbVd3)を接種した1週間後にCbVd3(CbVd1)を接種した:CbVd1→CbVd3,CbVd3→CbVd1のいずれにおいても多くの個体において両ウイロイド種が検出された.CbVd1を単独接種した植物体では,病徴として黄斑および凹凸が特徴的であり,CbVd-3を単独接種した植物体では,黄斑および葉巻が特徴的であった.CbVd1→CbVd3,CbVd3→CbVd1および同時接種のいずれの植物体においても,CbVd3を単独接種した際に特徴的であった葉巻が観察され,RT-PCRの結果も踏まえ,本実験系ではCbVd3の感染力が勝ると推察された.③の実験を,接種インターバルを2週間としても,同様の結果となった.したがって,本研究で検討した条件では,CbVd1-CbVd3間での干渉効果を明瞭に発現させることは難しく,感染性の高低に影響する要因を明らかにしたうえで,感染性に優れるものを事前接種系統として再検討すべきだと考えられた.
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