本研究では,人工授精と飼育実験を用いた異種間交配試験,野外採集卵と成熟メスのDNA解析,3種のゲノム比較を通して,アオリイカ3種間における生殖隔離および遺伝子浸透の強さを明らかにする。その結果に基づき,異種間交配が起こりやすい組み合わせや,既に遺伝子浸透が進んでいる組み合わせを特定することを予定し、さらに,漁獲される3種の割合が海域ごとに異なることを踏まえつつ,人工産卵礁を用いたサポート事業がアオリイカ類の異種間交配に与える影響を評価へとつなげることを最終的な目標としている。初年度の研究計画では,大きく3つの研究小課題へ着手し、次年度である本年度は研究を発展させることを目的とした。それは人工授精試験,行動観察試験,およびゲノム比較解析である。人工授精に関しては、前年度に引き続きアオリイカ類3種の成熟卵と精子を用いて人工受精を行い、6割程度の受精成功度を得、さらに複数種間での人工授精を試み、授精がおきることを確認した。飼育試験に関しては、所属機関を変更後に飼育環境を整え、かけ流しや循環環境の構築に成功した。本研究において、アオリイカにおける人工授精方法を確立し、6割程度の受精成功度を得ることができた。この結果は既往研究に比較して非常に高い値であり,アオリイカ類の人工授精技術を大きく発展させたといえる。さらに、本研究で得られた知見の一部は、4件の国際誌、1件の国際学会また複数の国内学会に発表する成果となった。
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