2021年度の成果から、バナナの切断面をラマン分光で測定するとデンプンのピークが選択的に得られ定量性も確認できた。そこで2022年度は、デンプンを多く貯蔵するジャガイモ・サトイモ・カボチャなど他の農産物でも同様な測定が可能であるかを調べながら、切らずに皮ごと内部に蓄積したデンプンを計測する手法の検討も進めてきた。バナナと同様に、ジャガイモ・サトイモ・カボチャでも切断面を測定するとデンプンの情報だけを得られることが確認された。よって、ラマン分光によるデンプン計測を様々な農産物に応用できる可能性が示唆された。一方で、切らずに皮ごと測定するとラマン分光スペクトルのベースラインが急激に高くなり、デンプンのピークを上手く観察できないという結果が得られた。詳細な原因は明らかではないが、蛍光物質を含むサンプルをラマン分光で測定するとベースラインの上昇が起きることから、表皮に含まれる蛍光物質の影響と考えられる。このように2021-2022年度の研究を通じて、様々な農産物が対象であってもラマン分光により切断面を測定することで従来数日を要していたデンプン計測がわずか数十秒に短縮できた。一方、切らずに皮ごとデンプンを測定するために表皮由来の蛍光をどのように制御していくかが次のステップに進むカギとなる。この技術が確立できれば収穫時のデンプン量に基づき農産物の適切な用途を非破壊的に判別できるようになる。本研究で得られた成果は既に国際誌3報に掲載された他、国際会議2件と国内学会2件で発表を行った。
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