研究課題/領域番号 |
21K15113
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
劉 孟佳 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (50826922)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 内皮細胞性造血 / 組織リモデリング / 組織マクロファージ / Nkx2-5 / シングルセルRNAシーケンス |
研究実績の概要 |
本研究は胎生期における心臓・大動脈系の形態形成過程に発生する多くのアポトーシス細胞を除去するのにマクロファージが必要であること、またその産生メカニズムを証明することを目的としている。我々の先行研究から、組織リモデリングと時空間的に一致して一過性の内皮細胞性造血が起こり、その一部がマクロファージに分化することで形態形成に寄与していることを明らかにしてきた。胎生期の他の造血器官に比べ、Nkx2-5転写因子依存的な内皮細胞性造血はマクロファージ優位な分化様式を示すことがわかっているが、その分子機序は全く不明である。そこで、当該年度では、Nkx2-5ノックアウトマウスのシングルセルRNAシーケンスデータを用いたシグナルネットワーク解析などから新規分子制御機構を同定し、Notchシグナルおよびレチノイン酸シグナルの関与を示唆した。さらに、Nkx2-5依存的に産生されるマクロファージの意義を追及するため、Nkx2-5系譜細胞特異的マクロファージ欠損マウス(Nkx2-5-cre; Csf1r flox/flox)の表現型を解析した。その結果、約半数は胎生致死であり、生存個体の大動脈は野生型に比べて細くなっていることを発見した。引き続き胎生致死の時期および原因を探索することで、局所産生マクロファージの意義を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Nkx2-5欠損マウス胎仔を用いたシングルセルRNAシーケンス解析は順調であり、2020年に発表された新規シグナルネットワーク解析手法(NicheNet)を用いたことで心臓・大動脈系におけるNkx2-5依存的な内皮細胞性造血の分子機序を同定した。レチノイン酸シグナルの関与を示唆しており、造血コロニーアッセイより検証実験が進行中である。他のシグナル伝達系の関与も検証中であるが、比較的速やかに結果が得られると考える。一方、胎生期大血管系(咽頭弓動脈)のリモデリングにおける内皮細胞性造血由来マクロファージの意義の追及については、目的の遺伝子型(Nkx2-5-cre; Csf1r flox/flox)マウスの獲得が困難な時期があり当初の予定よりも遅れている。現在、十分な数の雌雄マウスが得られたので早急に胎生期の表現型解析を進める。
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今後の研究の推進方策 |
Nkx2-5依存的内皮細胞性造血の新規分子メカニズムの証明はin vitro造血コロニーアッセイを用いて引き続き検証していく。一方、Nkx2-5-cre; Csf1r flox/floxの表現型解析については、現時点で各妊娠個体から得られる遺伝子型にばらつきが大きい傾向があるため、解析数を増やすことで解決する。さらに、Nkx2-5系譜を持つ組織マクロファージの胎生後期および生後の局在パターンの解明は本研究課題での重要な問いの一つである。現在Nkx2-5-creレポーターマウスのwhole mount組織を用いて透明化と免疫染色を組み合わせた方法でのイメージングを計画しており、早急な条件検討の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
公開されているバイオインフォマティックスデータの解析を利用して多くの実験が省略できたため、当初の使用計画額に満たなかった。ただし、翌年度はその解析結果をもとにした検証実験を予定しており、その多くは造血コロニーアッセイである。造血コロニーアッセイには、高額な培地(Methocult)と多種のサイトカインを必要とするため、次年度使用額から賄う計画である。
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