研究課題
若手研究
本研究では,食害に応答したモウセンゴケ属の素早い花閉鎖運動が,スペシャリスト植食者であるモウセンゴケトリバの食害に対する防御として有効であることを示した。具体的には以下の点が明らかになった。(1)トウカイコモウセンゴケは食害に応答し,概日時計による閉鎖の9倍の速度で花を閉じた。(2)花の閉鎖はモウセンゴケトリバの花内部への移動を物理的に妨げた。(3)閉鎖する花では,閉鎖をレジンで阻害した花と比較して,胚珠食害率が統計学的に有意に低くなった。
植物生態学
一般的に植物は動物と比較してゆっくりと運動する。しかし,中には接触刺激に応答して素早く運動する植物も存在する。このような植物の運動の生態学的意義についてはほとんど分かっていなかった。本研究では,モウセンゴケ属の花閉鎖運動を題材として,植物の素早い運動がスペシャリスト植食者に対する防御効果をもたらすことを初めて定量的に示した。モウセンゴケ属の花閉鎖速度には種間・地域間で変異が存在するため,今後,食害圧と関連した植物の素早い運動の適応進化について,総合的に明らかにできる可能性がある。