研究課題/領域番号 |
21K15161
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山崎 大志 東北大学, 東北アジア研究センター, 学術研究員 (70866392)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 貝塚標本 / 遺跡 / 博物館 / 貝類 / 形態進化 / 浮遊幼生 / 種多様性 / 埋蔵文化財 |
研究実績の概要 |
2021年度は世界的に流行した新型コロナウイルス感染症による社会情勢の変化に伴い、国内における野外調査・公的機関における標本の実見・学会発表などに大きな制約を受けた。そのため研究計画に変更が生じ、既に取得済みであったサンプルを用いた遺伝的解析、および文献資料やデータベースの調査を進めることが中心となった。そこで本年度はまず、主な研究対象である浅海性の巻貝類を用いて、遺伝的変異の空間分布パターンと生態的特徴の関連性を検証した。生息地選好性が対照的な姉妹種(外洋性および内湾性)について、分布域内における遺伝的多様性・集団分化のレベルを比較したところ、内湾性種は外洋性種よりも遺伝的多様性が低く、高い遺伝的分化のレベルを示すことがわかった。このように、同一の海域で種分化した姉妹種の遺伝的変異性は、それぞれの生態的特徴から影響を受ける可能性が示唆された。また、次世代シークエンサーを用いた集団ゲノミクスから、海洋島固有種の集団構造および集団動態推定を高解像度で明らかにした。データベースの調査から、全国の貝塚遺骸について検討すべき標本をリスト化し、図示されている標本写真から形態的特徴を抽出するとともに、次年度以降の計画を立案した。また琉球列島の貝塚遺骸については実見ができ、撮影および形態解析を行なった。これらのうち、一部のサンプルは年代推定および古代DNAの抽出に取り組む予定である。加えて文献資料の調査から、浅海性巻貝バテイラ属の1種について有効名を示し、共同研究として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
世界的に流行している新型コロナウイルス感染症による社会情勢の変化を受けたため、本研究における2021年度の実施計画にも影響があった。具体的には新規の生体サンプルの取得および野外における生態調査に滞りが生じたことに加え、貝塚遺骸を収蔵している公的機関への訪問および資料精査が予定通りには実施できなかった。一方で、全国遺跡報告総覧等を用いた文献資料の調査を進めており、対象とする貝塚遺骸の産出状況のデータベース化を進めることができた。加えて、取得済みのサンプルについて包括的な遺伝的・形態解析を実施し、成果を公表することができた。一部のサンプルについては年代推定も進めていることから、次年度以降の成果公表についても見通しが立っている。以上のことから現在までの進捗状況にはやや遅れが生じているものの、一方で次年度以降の研究については十分に準備を整えており、こうした進捗の遅れをカバーできると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に実施できなかった新規サンプルの取得および野外における生態調査を行う。得られたサンプルは高解像度の遺伝的解析からゲノムワイドデータを取得し、詳細な系統推定・集団構造推定・集団動態推定を行う。加えて、公的機関に収蔵されている貝塚遺骸標本の実見を進めていく予定である。一部の遺骸標本については年代推定を実施し、形態変遷の時系列を把握していく。さらに、遺骸標本を用いた古代DNAの取得に取り組むため、必要な許可申請を行う。許可が得られた標本について必要な処理を進めていく予定である。また2022年度以降も新型コロナウイルス感染症による社会情勢の影響を受ける可能性もあるため、柔軟に計画を見直しつつ実施していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、世界的に流行している新型コロナウイルス感染症による社会情勢の変化に伴う行動制限の影響を受けたため、野外における調査・サンプリング、公的機関に収蔵されている貝塚遺骸標本の実見が滞り、次年度使用額が生じた。そのため2022年度は、上記の実施を進めていくとともに、国際会議における成果の公表のための旅費として使用する予定である。加えて、得られた新規サンプルについて実施する次世代シーケンサーを用いた遺伝的解析の外注費用として支出する予定である。
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