研究実績の概要 |
マクロファージを化学的に神経細胞に変換する低分子化合物の候補を検討した。健康な成人から同意を得て採血し、末梢血単核球を重力遠心分離法で分離した。その後、単核球を単球接着培地で2時間培養し、浮遊細胞を廃棄した。残った接着細胞を10%FBSと20 ng/mlのヒトM-CSFで培養開始した。7日後、ほとんどの細胞がマクロファージマーカーCD11bとCD206に陽性であり、単球由来のマクロファージが誘導されていることを確認した。この時点を0日目と定義した。0日目のマクロファージをいくつかの低分子化合物と一緒に培養し、ニューロン様構造化細胞が誘導されるかどうかを確認した。5 種類の化合物に DB2313 を加えた組み合わせ、すなわちCDFIYB(CHIR99021 3μM, Dorsomorphin 2μM, Forskolin 10μM, ISX9 3μM, Y27632 3μM, DB2313 0.5μM)を用いてマクロファージを培養したところ、一部のマクロファージは劇的な形態変化を示し、7日目には複雑な神経突起様の構造が観察された。免疫染色により、これらの細胞は神経細胞マーカーであるTUJ1、MAP2、DCX、NEUNを発現していた。一方、神経細胞マーカーを発現せず、CD11bとCD206が陽性を示す細胞も存在した。これらの結果は、分化に成功した神経細胞と分化に失敗したマクロファージが同時に存在することを示唆している。TUJ1陽性細胞の約5%と30%がそれぞれMAP2とDCXに陽性であったことから、誘導された神経細胞はほとんどが未成熟な神経細胞であることがわかった。6種類の化合物のうち1種類を除いて細胞を培養した場合、神経細胞の純度と変換効率は低下した。
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