本研究は生薬「サイコ」の国産化および安定供給を目指し、基原植物であるミシマサイコ栽培の最大の障害となっている発芽勢を改善することを目的としている。3年目となる令和5年度には、シードコンディショニングによる発芽勢を改善するための手法の確立と、実圃場への応用を目指し、検討を行った。その結果、ミシマサイコ種子に実施していたシードコンディショニングを組み合わせることで、発芽日数を早めることと発芽勢を改善できることを明らかにした。すなわち、令和4年度までは「発芽日数は早まるが、発芽は揃わないシードコンディショニング」と「発芽日数に時間を要するものの発芽勢を改善するシードコンディショニング」の方法を見出しており、令和5年度の検討ではこの2つのシードコンディショニングを組み合わせることで、発芽日数が早く、発芽勢も改善できることを明らかにした。この方法を活用して実圃場に応用できる技術として確立するため、シードコンディショニング後の種子を薬用植物園内に設置した試験ほ場を用い、発芽に要する日数の調査と、生産物の収穫量と質(形状・成分含量)に与える影響を調査した。この結果は現在解析中であるものの、同一種子数を播種した場合に、シードコンディショニングを行った群はシードコンディショニングを行っていない群に比べて発芽に要する時間および発芽勢を改善した。さらにシードコンディショニングを行うことによって収穫物である根の形状(長さ及び直径)は、シードコンディショニングを行っていない群に比してその標準偏差が小さくなる傾向を見出した。成分含量は現在測定中である。以上のことから、本研究課題で開発したシードコンディショニングは実圃場においても応用可能であることを明らかにした。
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