今後の研究の推進方策 |
アデノウィルスは、継代を重ねることによりアデノウィルスベクター内の変異型Xの性質が変化した可能性が考えられ、継代数の少ない保管ウイルスから増幅する。また、他の変異型Y及び野生型のウィルスにおいても継代回数の増加による性質の変化を防ぐ。 その後、野生型および2種の変異型PTPN11(X, Y)を過剰発現させたNRCMを、心筋特異的マーカーであるαアクチニンで共染色し、心筋サルコメア構築を確認し、心筋細胞の表面積、短径横径を計測・比較する。また、核染色を行い、肥大型心筋症で見られる核の拡大やサイズのばらつきを検討する。 ウィルスの感染効率が高く保てる条件を決定し、高効率に感染させたNRCMから蛋白を抽出し、心筋肥大シグナル(SHP-2 、p-MEK、ERK1/2 、p-ERK1/2 、calcineurin, NFAT, p-NFAT等)の発現量をウエスタンブロットにより測定し、複数の心筋シグナル経路(MEK1/2-ERK1/2系、Calcineurin-NFAT系等)の活性を比較する。ウィルスの感染効率が低くウェスタンブロット法での検討が困難であれば、PTPN11遺伝子に付加したHAタグに対する抗体と抗p-ERK1/2抗体を共染色する細胞染色により、細胞レベルでの評価を試みる。Calcineurin-NFAT系については下流分子NFATの核移行を抗NFAT抗体の細胞染色で観察する。さらに、一般に肥大心筋で亢進していることが知られているアポトーシス活性をTUNEL法で評価し比較する。PTPN11変異の二次性心筋症の発症や重症化にMEK1/2-ERK1/2系が関与していれば、ERK1/2を阻害することにより抑制されると考えられる。がん領域でPhase1の治験が始まっているERKの阻害剤であるMK-8353、GDC-0994を投与することにより、NRCMの表現型が改善するかを確認する。
|